運動負荷は要りますか?
組織のトップから「『人間ドックの運動負荷検査は無意味だから要らない』と循環器専門の先生が云っていたんだけど、先生はどう思う?」と聞かれて、「虚血性心疾患をスクリーニングするという意味ではあまり効力はないかもしれませんが、少なくとも生活習慣病の受診者にこれから運動をさせても良いかどうかの判断をする上では重要な検査だと思います」と答えたことは、たしかここにも書きました。あるいは、運動負荷で軽い異常があったので精査をしたら重症冠動脈病変が見つかって緊急手術になったというケースも紹介しました。
でも、本当は迷っています。無症状の冠動脈狭窄病変がある人になんらかの血行再建術を行うことが生存率や心事故の明確な予防につながったというデータは実は一つもないのです。症状もないのに、たまたま検査の異常があって冠動脈の精査をしたら狭かった。詰まったら危ないから広げた。病気になる前に未然に防げてよかった、よかった。と、治療した人も治療を受けた人もその家族もそう思うかもしれないけれど、もし、ドックを受けなかったら、ドックで運動負荷検査を受けなかったら、冠動脈の病変を知る機会がなかったら、その人は何事もなく人生を全うできたのかもしれない。半端に治療して、その後の感染症をきっかけに寝たきりになったり、腎不全になったりする人もいるかもしれない。
ここのところ同じような内容のアップが続くのは、やはりわたしの中に迷いがあるからでしょう。先日学会で、旧知の循環器科ドクターにそのことを問うたら、「ディレンマだね」と云われました。でも、「それでもやはり、人間ドックでの運動負荷検査は行うべきだと思います」と云ってくれました。その検査をきちんとやって、出てきた結果をただ機械的に振り分けるのではなく、検査結果の心電図所見とドックデータと問診から、気にしなくても大丈夫か、専門医に行くべきかの判断ができるのが循環器内科医の経験値であり、その判断には自信を持ってもいいのではないですか、とも。
心強いアドバイスではありますが、一方で大変な重荷。
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