基準値騒動セカンドステージ
先日、うちの病院の検査室担当者と話し合いがありました。来年度から病院の基準値を変更する予定だそうで、その詳細を説明してくれました。医療機関でバラバラだった基準値を統一させようという動きは以前からあり、それが国内の多くの学会と日本医師会が合意して作った『共用基準範囲』というもの。おそらく近い将来に日本中の医療機関の基準値がこれに替わっていくだろう、とのことでした。
さて、この値は、昨年の春に日本人間ドック学会が勇み足でマスコミにリークさせてしまった、あの値の類です。健診現場の基準と一番かけ離れているのは脂質でしょうか。男性の総コレステロールは142-248、中性脂肪40-234、LDLコレステロール65-163。あるいは男性の尿酸値3.7-7.8。以前から何度も書いてきたように、臨床現場の基準値と予防医療現場の基準値が同じ値であること自体がおかしいのであって、予防医療は基準値以上は「正常ではない値」、臨床現場は基準値以上は「治療(薬剤治療)すべき最終宣告」・・・見ているモノが違う。
何の矛盾もないこの変更ではありますが、たぶん、世間は昨年と同じように混乱するでしょう。何よりも受診者さんが被害を被(こうむ)ります。無知なマスコミの煽りはやむを得ないとしても、不勉強な臨床現場の医者たちがネックです。健診や人間ドックで、「正常ではないから生活療法を含む治療をお願いします」という趣旨の診療情報提供書を発行したとしても、「こんなの正常値なのだから治療なんかいらない」と突っぱねかねないわけで、これが一番の懸念材料です。このギャップを埋めるために啓蒙活動をしなければなりません。そのためには、少なくともわたしたち予防医療の世界で働く者たちがこの基準値の意味の違いをしっかりを理解する必要がある、と痛感させられた次第です。
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