前向きの予防
わたしは、予防には『後ろ向きの予防』と『前向きの予防』があると考えています。『後ろ向きの予防』というのは、『病気にならないようにしよう』『老化しないようにがんばろう』というもの。それに対して『前向きの予防』は人生において病気の有無などにとらわれず健康的に年を取って満足のできる人生を全うすること、と定義しました。『前向きの予防』こそが予防医学の究極であり、時代は徐々にそちらに向かっている気がしています。人生に病気が存在することを前提に、それに勝つかどうかを人生の評価基準にしようとするのは本末転倒も甚だしいと思うようになったわたしです。病気が絡まなければ医療ではないと云われてしまえば元も子もないけれど、病気の存在は人生を考える上で必要不可欠なものではありません。
最近、人間ドック学会の山門實先生や渡辺清明先生が『先制医療』という単語をよく使われます。予防医学を普及啓発するために創り出した言葉だと想像します。病気の発症予防(つまり一次予防)をするのが『先制医療』で、発病した病気が重症化するのを予防する(二次予防)薬物医療と対比させているわけです。うちの施設のトップたちもこぞって「これからの予防医療は『先制医療だ』!」「これからは自分の体質を知って病気になる前から自分にあった生き方をするように働きかける時代だ!」と色めき立っていますが、先制医療というのも結局は『後ろ向きの予防』。10年遅れているわ!とこっそり突っ込むわたしがいます。
病気の治療を受けていても、そのおかげで楽しく生き甲斐のある充実した日々を送っているヒトたち。人生最後の日に、『みんな、ありがとう。楽しかった!』と総括できる人生を送れた時、『前向きの予防』は完成するのだと考えています。
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