予後の推測
予防医療を行う中で一番大変なのは予後予測です。検査を受ける側の多くは、今重大な異常があるかということだけでなく近い将来何かが起きないか知りたくて検査を受けています。大きな異常があって、『遠くない将来に心筋梗塞や脳卒中を起こす確率が高いから早く対処しなさい』というのは簡単ですが、『今回の検査に異常がないので当分何も起きないでしょう』と太鼓判を押せるかどうか、なのです。
たとえば負荷心筋シンチグラフィという検査があります。これで明確な異常がなければ 予後良好で今の生活を続ける限り心筋梗塞などにかかる可能性は低いと云える、といわれています。冠動脈CT検査で石灰化が多いと心筋梗塞を起こす危険性が高くなり、それがなければ危険性は極めて低いとも云われています。最近は心筋の細胞に流れる血流予備能を調べて正常ならば危険性が低いというところまで云えるようになりました。
でも、ですよ。ほとんど野放しの糖尿病や高血圧のヘビースモーカーのおじさんの検査結果が悪くなかったとき、ほとんどの場合これからも問題ないはずだから今まで通りの生活を続けてもいいよ、とか云えますか? スモーカーの肺CTだったら、異常がなくても半年後に扁平上皮がんが発生するかしないかは保証できない!といえるじゃないですか。明らかに血管のプラークの破綻が繰り返されているに違いない連中の今の生き方を支持してあげる勇気はわたしにはありません。統計学がどうであれ、数パーセントの例外に入る可能性の高い連中・・・彼のことを本当に心配しているからではなく、わたし自身の保身のために。
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