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健診の読影力

先日、医学生が実習に来たので、予防医療に対する医師の心得についてレクチャーしました。『予防医療における医師の役割は何か』ということを話しているうちに、自らもう一度再認識させられたことがありました。

予防医療における医師の役割の双璧は『的確な読影力』と『行動変容につながる説明力』です。わたしは特に後者について熱く語りました。「健診結果の説明なんて優秀な臨床医なら誰でもできる」と思ったら大間違いで、臨床現場の幹部たちに説明をお願いしたら受診者からとても顰蹙を買って大変だったというエピソードを話しました。ただ、あまり重視してこなかった(というか、これこそ優秀な臨床医ほど良いと思っていた)前者『読影力』についても、健診の特殊性をしっかり理解しないといけないのだということを、説明しながら悟った次第です。『読影力』というのは、単に見落としをしないというだけでなく、今回本当に受診を勧めるべきなのかという判断力も問われるわけです。「疑わしきは精査すべし!それが健診の基本だ!」と主張するドクターも多いですが、この世界に入って約15年、わたしのココロもだいぶ変わってきました。指摘された受診者がわざわざ仕事を休んで医療機関を受診し、もしかしたらさらに 何度も受診させられたりして、結局”問題なし”となったとき、皆が「何もなくて良かった!」と思うかどうか。有給休暇を取らされ、安くもない医療費まで払ったのに何もなかったということは、初めから受診などしなくても良かったのではないか?という疑問と不満が少なからず湧き上がってくるはずです。わたしならきっとそう思うから。

所見を見落とさないだけではなく、無駄な受診をさせず、それでいて不安や心配を残させない判断をする力というのは、かなり高い知識と経験が必要です。何でも訴えられる時代、自身と施設の保身のために強めに拾い上げる風潮中で、冷静に受診者のそんな社会的なメリットも鑑みてあげられる医者に、この医学生たちもなってほしいものだと思いました。

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