心療内科
「『あそこが痛い、ここが痛い』と訴え過ぎたのかしら。かかりつけのお医者様がわたしに心療内科に行くように勧めるの。ショックだったから、『わたしって、おかしい?変になってる?』てあちこちのお友達に電話して聞いてみたんだけど、みんな『そんなことないと思う』って云ってくれるんです」
ある初老の知人女性がそんなことをボヤきました。いつから心療内科と精神神経科が混同されるようになったのでしょうか。たぶん、うつ病やメンタルケアの重要性がクローズアップされて、精神科は敷居が高いが心療内科なら行けそうだみたいなことで市民権を得始めてからおかしくなった気がします。むかし、『心身症』を『神経症』と混同したときのようなものかもしれません。心療内科は、アタマがおかしくなった人が受診するところではありません。うつ病の治療をするところでもありません。心療内科が行うのは心身医学の実践、つまりまさしく『心身症』の治療。『心身症』とは、『身体疾患の中で、その発症や経過に心理的社会的な因子が密接に関与し、器質的ないし機能的障害が認められる病態』と定義されています(日本心身医学会1991年)。つまりストレスや睡眠不足などによって胃潰瘍になるとか不整脈が起きるとか、そういうものが心身症であり、自律神経系の不具合の表現として実際に病気が引き起こされているヒトにその原因を取り除いたり軽減させたりして病気を軽減させるのが心療内科です。潰瘍性大腸炎の治療をする病院に心療内科医がいる、というのがどういう意味か考えてもらいたい。
以前、わたしの受け持ち会員の方に毎日精魂詰めて仕事をしておられる方がいて、循環器系の不具合が噴出してきたので心療内科受診を勧めたときにも「わたしの症状は気のせいとかじゃないんだ! わたしをキチガイ扱いするのか!」と烈火のごとく叱られました。心療内科はれっきとした内科学なのですが、なぜかプライドを傷つけられた気がするらしい。『自律神経失調症』などという実態のない病名があるのも物事を複雑にする原因になるのかもしれませんが、今一度原点に戻って、世間の皆さんに心療内科とは何かということを、きちんと認識させたいものだと思います。
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