ヒルクライム
その還暦を超えたばかりの男性は、曇った顔になって、こう質問してきました。
「わたしは今、自転車に凝ってまして『ヒルクライム』というイベントによく参加しているんですが、止めないと危険だということですか?」
ヒルクライムというのは、自転車などでかなりの山道を登っていくタイムレースです。特に最後の最後には立ち漕ぎしながら強烈な無酸素運動で必死に漕いでゴールする、まあその瞬間の達成感を得たくてやっているようなものだ、とわたしの知人が云っていたのを思い出しました。この男性もまたその瞬間に取り憑かれた1人でしょうが、実は今回の人間ドックで冠動脈の石灰化や運動負荷心電図検査での不整脈や軽度高血圧と糖代謝異常などが見つかってしまったわけです。有酸素運動や軽度の筋トレはむしろ有効なのでしょうが、アスリート系の運動は危険だから勧められない、ということになります。
まあそうなんですけどね。「こないだのレースで70歳の人に抜かれて勝ちきらんかったのが悔しかった」と語るその男性を前に、建前論はそこまでにしました。「もう少し軽いレベルに控えてくれ」「ほどほどでやってくれ」などと云ったところで意味はありません。ロードランナーで平地を何十キロも走ることに楽しみを変えることができるのならそれに越したことはないですが、最後の最後の、死にそうになる程頑張るのが楽しくてやっている競技ですから、中途半端にやってもしょうがない。他のスポーツもそうですが、勝ち負けを競ったり自分の記録を更新するためにやるスポーツは、とことんやるか一切やらないかの二者択一のところがあります。「最後は自己責任の話になりますが、せめて周りに多くの人がいるところでやってくださいね」というお返事をしました。それもまた人生かな、と。
| 固定リンク
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- 下を向く(2022.06.19)
- ヤクルト1000騒動(2022.06.16)
- 枕元のスマホ(2022.06.21)
- お腹が空かない(2022.06.15)
- 頃、の曖昧さ(2022.06.09)
コメント