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断らない

最近、うちの病院への患者さんの紹介が少なくなっているということで、現場はいろいろな努力をしているようです。でもなかなかうまくいかないと聞きました。根本には厚労省の施策があり、高度救急病院には選び抜かれた重症患者さんのみ送るようにしているから、というのはわかります。市中の一般病院で解決できるようになったことは喜ばしいことです。ただ、それをどこかで履き違えている若い先生方や幹部が多くなってきたような気もして、ちょっと心配です。

どんな時でも『選ばれる病院』であるためには、常にトップクラスの知識と技術の修得を怠らなければそれでいい、というものではありません。紹介をいただくドクターや受診を希望する患者さんから信頼を得るというのは、そんなことだけではないのです。 そのことを教えてくれたのは、今は亡きわたしの元ボスでした。研修医として今の病院に勤務を始めた時、最初に徹底的に指導されたのが『断らない救急』の考え方でした。救急要請があったら必ず受ける。最初の要請電話でトリアージする必要はない。相手が困って自分たちを頼ってくれているのだから、不安に駆られている患者さんがそこにはいるのだから、まず来てもらうか迎えに行くかして、自らの手で鑑別診断しなさい。紹介していただいた先生を常にリスペクトし、病状が良くなったら必ず紹介をいただいた先生の元に戻るように患者さんを説得しなさい。常に自分達がバックアップしていることも含めて。

『断らない救急』は単に最上級の医療提供をすることだけではなく、紹介をいただいた先生とも紹介をいただいた患者さんともしっかりとした信頼関係を形成することに本当の意義があるのだ、と洗脳と云っても過言ではないくらいの教育を受けました。中堅どころの医師ではなく、医者になったばかりの研修医の若造も皆揃って同じベクトル上にあったからこそ定着できたのだと思います。自分の培ってきた高い技術と知識を活かすことだけを最優先に思う者が一人でもいれば、どんなに幹部たちがトップダウンの指示を出しても徹底できるものではありますまい。

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心と体」カテゴリの記事

コメント

はじめまして。
『医は仁術』という言葉を思い出しました。

医療技術だけを追求するなら、ふるえたり
疲れたり時には間違いすらおかすヒトよりも
例えば、手術用のアームだけを備えたロボとか
メカの方が優秀かもしれませんが、医療の本質は
ヒトのもっとも繊細な部分に向き合うという
ところにあるような気がしてなりません。

ちなみに私は20年以上も前になりますが
救急搬送された折、当直研修医の専門外
という理由から救急指定病院への搬送を
断られた経験があります。他に受け入れて
くれる病院があったので一命をとりとめる
ことができましたが。。。

医療の役割は治療だけではないと思いますね。

投稿: Vitz | 2016年8月30日 (火) 21時09分

Vitzさん

おはようございます。コメントありがとうございます。わたしが30年以上この世界に生きていて医師としてはいまだに甘ちゃんなのは、こういうヒューマニズムの部分ばかり最優先するからかもしれませんが、それでいいと思っています。一等最初にこんな生き方を教えていただいた元ボスにとても感謝しています。

投稿: ジャイ | 2016年8月31日 (水) 06時40分

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