亜鉛
わたしに定期的に配信してくれるヘルシーパスさんのニュースレター。今回のテーマは『亜鉛の体内動態』
この微量元素はなかなかの曲者です。サプリの理論はとてもシンプルでクリアカットなのですが、臨床現場ではそう理屈通りにはいきません。体内吸収率が低いことも影響するのでしょうか。亜鉛やマグネシウムのような微量元素は、それ単独の動向ではなく、体内代謝の重要なパーツとして働くので、単にそれを補っておけばいいわというわけではない上に、欠乏すれば確実に不都合が生じる存在です。亜鉛なんて普通に好き嫌いなくモノを食っておけば欠乏することなんかないと思っていましたが、最近はそうでもないようです。
亜鉛の必要性を初めて認識したのは、もう20年近く前、循環器内科医として外来をしていたころです。ずっと通院していた女性患者さんが、「急に味がしなくなった」と訴えました。見たところ舌にはこれといって異常はなさそうだし、CTなどでも明らかな異常はなさそう。「大したことではないのですが」とはいうものの、毎日の食事がゴムを噛むようで味気なく楽しくないというのです。そのときに、味覚障害の原因として亜鉛不足があることを知りました。当時は今ほどサプリに市民権もなく、薬剤治療といっても大したものはなかった記憶があります。特に偏食や過度のダイエットをしたわけでもないし、ストレスが溜まった様子もなく、いつの間にか外来で訴えることもなくなりましたが、あれは彼女が単に諦めただけだったのかもしれません。
亜鉛という文字を見ると、今でも必ず彼女のことを思い出します。そして、何の力にもなってあげられなかったことを悔しく思います。
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