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ながら食い

子どもの頃、「日本国民なら、食事は行儀よく黙々と食べるのが佳し」と教わりました。何かをしながらの『ながら食い』など言語道断だと云われました。ところが、食事時間は団欒の時間であり、皆と語らいながら楽しく食べることが栄養学の点でも重要だと云われるようになりました。一人で黙々と食べるとつい噛まずに丸呑みする可能性が高く、何かに熱中しながら時間をかけた方がいいことを考えると、かえって『ながら食い』をすべし!という動きも出てきました。

でもどうなのでしょう。お一人様の食事。注文した食事を前にまずスマホで写真を撮り、それをアップした後でそのままスマホに熱中しながら食事を取る。きっと食材の味なんか味わってはいないだろうなと側から感じられる光景。「ちゃんと味わってるよ」と反論されるかもしれないけれど、絶対に新しい味をその中から発見することはないだろうと思うのです。みんなで和気藹々と楽しく盛り上がる食事会はどうか? これまた絶対に味なんか堪能していない。「旨し!」とかSNSに投稿したところで、話に興じれば興じるほど味は二の次になってしまう。かと云って、独り黙々と噛み倒して、料理の素材のなんたるかや味付けの工夫の深さを吟味するなんてことをするはずもなく、会食してコース料理の一つ一つに寸評を云い合うなんてシュールなことをする環境は、少なくとも庶民であるわたしの周辺にはありえません。

「生活習慣病予防の基本は、目の前の料理を感謝を持って味わい倒すことです」としたり顔で主張してきましたが、これ、よく考えると簡単なようでかなりの難題かもしれません。

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