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2016年10月

同窓会

先日、福岡で中学時代の小さな同窓会がありました。わたしが学会で福岡に行くのをきっかけに声をかけてもらって実現しました。9人ほどの小さな会でしたが中学卒業以来(もはや半世紀近く経ちました)のヒトも居て、はなしが弾みました。一年前には東京在住の会を開いてもらって、その後も何度か集まっている様子です。地元大分では、ノストラダムスの大予言の直前に行った大同窓会以来、誰かが帰郷したとか恩師が賞をもらったとか、何かと口実を付けては皆が集まって宴をするようになりました。

そういうのに可能な限り県外から駆けつけて参加するようにしているのですが、この会、参加頻度が多いヒトほど若返っている印象があります。見た目が若いヒトだけが集まっている、というのではないのです。この歳になると見た目年齢は本当に幅があります。中学時代とちっとも変らないヒトから、あなたはもしや恩師ですか?と云いたくなるヒトまで・・・。最初に会ったときにはそんな感じだったのに、会うごとに肌つやが良くなってどんどん若くなって行くヒトたちが少なくないのです。

これはきっとアンチエイジングの基本なのかもしれません。会っている間、皆が若かりし中学時代に戻ってしまうことも重要な因子だし、会うヒト皆が若いから自分も負けてはおられないという気持ちになることも重要・・・たしかに日頃から若い子たちに囲まれて仕事をしていると若くいられる(うちの職場みたいに)というのもありますが、やはり同い年の幼なじみが若いと競争意識は自然に芽生えるもの。

「●●くん、いつ見ても若いね」「○○さん、ホントきれいだね」と云われるのって、どんな媚薬より優れたアンチエイジング薬だと思います。だから、どうぞ皆さん、万難を排して同窓会には参加しましょうね。

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不平等?

「誰とは云いませんが、この忙しいときに、異常に仕事が遅いドクターがいますよね。アタマにきませんか?」

あるドクターが先日わたしにそう話しかけました。たしかに、例えば人間ドックの結果説明をする数で云えばわたしの半分以下の量しかしない人は居ます。以前はドクターの中でわたしが一番遅かったのに、今やわたしはダントツで一番量をこなすドクターに成り下がりました。

そんなわたしですが、その問題になっているドクターのことを特段悪く思ったことはありません。というか、あまり気になりません。その人が一人終わるごとに裏でお茶でも飲みながら休んでいるのならともかく、休みなく一生懸命やっているのならばそれでいいではありませんか。医療の世界は同じ時間にさばいた数がたくさんの方が優秀というわけではありません。少なくともそのドクターの説明を受けた受診者からのクレームが届いたことは一度もないのです。しかもそのドクターのせいで夕方に時間外労働を強いられたことも一度もないのです。つまり、わたしはそのドクターのせいで迷惑を被った経験はほとんどありません。仕事量の差? いえいえ、朝から夕方まで働いている時間はまったく同じです。休む時間も同じだし、一生懸命さも同じ(むしろわたしの方が低いかも)。だとしたら、何の文句もありますまい。これを「仕事量が不平等だ」というのはどこかおかしい気がします。本人は、「もう少し早くしなければ」と努力してくれています。わたしはそれで十分だと思っています。皆で補い合ってひとつ・・・それぞれのドクターがそれぞれに毎日精一杯がんばっている今の職場を、わたしは誇りに思っています。

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「春眠不覚暁」の危険な落とし穴

最後はこれ。原稿だけ出してそのまま雑誌社から音沙汰なく、そのまま廃刊になったのでまったく日の目を見なかった文章です。原稿料ももらい損ねました(笑) これは、睡眠時無呼吸のおはなしですね。

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「春眠不覚暁」の危険な落とし穴~真夜中は別の顔? (2007.3)

「春眠暁を覚えず」・・・つい寝すぎて夜明けに気づかない、春の眠りは心地よいものだ、という孟浩然の漢詩ですが、確かに春は眠い。朝に夢心地なだけでなく、昼下がりに猛烈な眠気が押し寄せることはありませんか。そんな方はそれが本当に春の陽気のせいなのかきちんと確認しなければなりません。実はちゃんと眠れていないせいかもしれないからです。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)を一躍有名にした山陽新幹線運転士の居眠り事件からもう5年、一時期話題になりましたが、どうも自分には関係ないかあっても大したことはないと思っている人が多すぎる感じがします。太っている人はもちろん高い確率で無呼吸を起こしています(二十歳からの体重増加量が多いほど呼吸が頻回に止まっているという報告があります)が、日本人のように顎が小さくて首が短い骨格の方は、太っていなくても加齢とともに重症のSASを起こすことがあります。難治性の高血圧の原因になることも多く、SASの治療をしたら高血圧も治ったという報告はめずらしくありません。脳卒中を4倍、虚血性心疾患を3倍、糖尿病を1.5倍起こしやすくしますし、重症SASは5年生存率を16%も低下させ、うつ病や突然死の原因にもなります。そんな重大な病態なのに本人の重篤感が薄いのは自覚症状が少ないからでしょう。厄介なことに、幽体離脱でもしない限り自分の寝姿を客観的に見ることはできません。自分はどうもないけど「呼吸しないから怖い」と妻がいう、という人が少なくないのです。最近体重が増えた人やいつも眠くて頭がすっきりしない人だけではなく、大きないびきをかく(と言われる)人、朝の頭痛がある人、朝喉が痛い人、寝相が悪い人、悪夢を見る人、頑固な肩こりがある人、インポテンツになってきた人、夜中にトイレの回数が増えた人、高血圧のコントロールがうまくいかない人などは、是非早めに検査を受けてください。

夜中には全く別の世界が存在しているかもしれません。

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ちょい不良オヤジに最敬礼

3編め。「アンチエイジング」と云うコトバがまだまだ怪しいモノだったころのもの。今や当たり前に市民権を得ている単語・・・時を感じます。この題名も好き。

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ちょい不良(わる)オヤジに最敬礼  (2006.12)

某男性ファッション誌が命名し、某イタリア人タレントで有名になった「ちょい不良オヤジ」という流行語はすっかり社会に定着しました。「おしゃれなんてガラじゃない」と逃げていた世間のおじさんの着こなしも明らかに変わった感じがします。それと一緒に、これまでファッションに全く縁のなかった(と思ってきた)おじさんたちの中に、見違えるように若くなった人たちがいることに気付きます。

本当に同じ歳なの?と思うくらいに、見た目年齢には幅があります。健診受診者の方を毎日見ていると、見た目年齢の幅は暦年齢が上がるほど大きくなっていく気がします。何が老化を進めるのか?アンチエイジングの立場から老化のメカニズムが究明され、その主体に酸化ストレスがあることがわかってきました。生体は身体活動の中で活性酸素などの多くの酸化物質を出します。それに侵されて身体が錆びつかないように即座に抗酸化作用を発揮してバランスをとっています。そのバランスが壊れた状態が酸化ストレスで、そのために脂質や蛋白が変性すると老化や発がんの原因になります。現代社会は酸化ストレスだらけです。タバコ・酒・紫外線・運動不足・過食・睡眠不足・過労など、思いつくだけでもたくさんあります。

ただ、老化の促進にはもう一つ重要な要素があります。「自意識」です。「年甲斐もなく」「いい歳をして」…そんな言葉が多くなる50歳頃、「いつまでも若くありたい」と思う反面、勝手に言い訳して諦めていく世代でもあります。自意識や人生の張りが若さを保つことは、政治家や実業家を見れば歴然です。彼らは引退した途端に萎んでしまいます。加齢臭の原因も活性酸素だそうですが、あなたは心の加齢臭も出していませんか。

折角の流行です。「面倒くさいからいいよ、オレは」などと意地を張らずに、不器用なりにほんのちょっとでもおしゃれをしてみましょう。毎朝鏡を見るたびに皺やシミばかり眺めていませんか。どうせ鏡をみるのなら、若く見える爽やかな笑顔の練習でもこっそりやってください。

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ハードボイルド派に明日はない

2編めは、禁煙外来が保険診療で受けられるようになった時の話題。わたし的には、題名が好き。

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ハードボイルド派に明日はない (2006.9)

くゆらせる紫煙と煌めくジッポライター…北方謙三のハードボイルド小説には必須のアイテム。そんな主人公に自分の姿を重ねてきたであろう愛煙家の肩身はますます狭くなっています。3年前に始まった健康増進法も徐々に威力を発揮し、空港でも駅でも完全隔離かガラス張りの見せ物部屋送り、あるいは屋外追放の憂き目にあっているでしょう。それでも、先日講演を頼まれて行った会場ロビーのど真ん中にまだ堂々と灰皿がありました。一般の会社で行われる「分煙」の大部分はほとんど効果のないものです。巷に走る「禁煙タクシー」も10分乗ったら運転手のたばこの臭いが服に染みつきます。

国が販売を許可している以上、権利を主張する愛煙家の気持ちも分からないではないですが、「100%有害」と断言できるのに製造中止にならないのにはきっといろいろと諸事情がおありなのでしょう。ただ、たばこの害の深刻さは癌や肺への影響だけではありません。高血圧や糖尿病は喫煙すると心筋梗塞・脳卒中の率を倍増させますし、奇形児・知能障害・流産など人類存続にかかわる大事だということを意外に皆さんは知りません。以前担当した50代半ばの男性は、同窓会の2次会でついついもらいたばこ。久々の1本、久々のひと吸いで急性心筋梗塞になって悶絶しながら救急車で運ばれてきました。

本年4月から、基準を満たす医療機関に限り、禁煙外来を健康保険で受けられるようになりました。これは、たばこを吸うこと自体が「病気」=ヘロイン中毒患者と同じ扱いになったということで、多くの医療機関がエントリーしています。禁煙は根性でがんばる時代ではなくなりました。うまく医療の手助けを受けることです。今は、いつまでもハードボイルド(固ゆで卵)にこだわる石頭おやじではなく、医者を使って格好良く禁煙に取り組むダンディズムが旬でありましょう。レッツトライ!   

「そんなことを書いてるおまえ、こないだまで『禁煙なんてしない』って言ってなかったっけ?」  
「そーお?でも今や私は禁煙推進の旗頭さ。さあ、あんたも早くこっちにおいで!」

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「メタボリックシンドローム」に喧々囂々

さてそれでは公言通り、むかし依頼されて雑誌に連載したもの4編を連続掲載します。アラフィフをターゲットにして創刊されたこの雑誌は4号が出る前に廃刊になりました。この連載は、その当時のトピックスを取り上げています。まずは、メタボ・・・初めてこの単語が世間に広まったころのものです。ちょっとなつかしい。

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「メタボリックシンドローム」に喧々囂々(けんけんごうごう) * (2006.6)

5月8日に厚生労働省がショッキングな報告をしてからマスコミや議員先生がうるさく騒ぎ立ててくれたおかげで、「メタボリックシンドローム」「内臓脂肪」の言葉がやっと市民権を得ました。

メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)とは、内臓周りに脂肪が溜まりすぎたために、本来その脂肪細胞から分泌されて動脈硬化のコントロールをしていたホルモン群が機能をしなくなり始めた状態です。

そのために血圧が上がり、血糖値が高くなり、血液中に脂肪が余り、動脈硬化が加速度的に進行して、ある日突然に脳卒中や心筋梗塞を起こします。大したことないから、何も症状がないからと放置しておくと、前ぶれなく突然動脈の壁が決壊します。日本人(特に男性)は余ったエネルギーを内臓脂肪に貯めやすい人種です。欧米人のような大きなお腹になってからでは手遅れだということを、メタボリックシンドロームの必須条件=腹囲85cmという数値が物語っています。この「85cm」、世間では“厳しすぎる”と騒いでいますが、医学界では“甘すぎる”として、もっと厳しい基準に変更させたい勢いです。この辺りにまだ意識の隔たりがあります。

病気が進行している方は早めに病院に行ってまず薬をもらってください。躊躇は命取りです。ただしそれ以外の大多数の皆さんの治療はいたって単純。大きくなった内臓の脂肪細胞を元の大きさに戻せばよいのだから、無駄に使って少ししか食わなければよい。夕食のおかずを今の半分しか作らなければよい。車やエレベーターはないものと思って歩けばよい。若い世代ほど危ないから、家族みんなで取り組めばさらによい。内臓の脂肪細胞は膨らみやすい代わりに縮みやすいという特徴を持っています。その気になればすぐに解決できます。

でも、おわかりでしょう。最大の問題は、病気の治療として今すぐその気になって行動に移せるかどうかです。「わかっているけど、なかなかなあ」と逃げ腰なあなた、今が人生の分岐点ですよ。

*(注)本当は「喧々諤々(けんけんがくがく)」と使いたいが正式には誤用らしいのでやむを得ず「喧々囂々」を使います。対象が50歳以上ならこれの方が良いでしょう。

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報道の良識

ノーベル文学賞受賞のボブディランが反応しないのは「無礼で傲慢だ」というノーベル委員長のペール・ベストベリィ氏のことばがメディアに報道され、それに対して「ボブディランらしい」「そんなことをいうおまえこそ傲慢だ」「だから選考基準がおかしいんだ」「権威の押しつけだ」などとSNSを通して多くのヒトが賛否両論を語り合った。それが今になって、実はベストベリィ氏のコトバはちょっと違っていたという。「無礼で傲慢だ」に続いて、「でも、それがボブ・ディランという人間だ」「この事態を予想してはいなかったが、彼は気難しいようだから驚きはなかったよ」「我々は待つ。彼が何と言おうと、彼が受賞者だ」と語ったという。

先日は、沖縄で大阪府警の機動隊員が工事反対派に「土人」と発言したことで大騒動が起きましたが、これも後になって、実は現地反対派の連中のコトバの方がはるかに汚く、殴られながらもガマンする機動隊員の動画が出てきて、騒動が急に収束。

こういうのは、最近の傾向なのでしょうか。面白そうなフレーズだけ並べて話題を煽る。世間で話題になってそれにともなって周りの多くを巻き込んだ上で、「実は・・・」と云う、そこまで想定した上での話題振りなのでしょうか。何かね、いい気がしませんね。インスタグラムやLINEに盛った写真や効果的な部分だけ切り取った写真をアップするのと同じにおいがします。個人が自らの虚構を盛るのは本人の勝手だけれど、週刊誌記者ばりの報道の仕方をするのはどんなものでしょうか。こんな時代だからこそ、報道する側の良識をもっと求めたい気がします。

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もっと複雑なモノ

「○○を食べると、がんが予防できる」
「●●を飲むと、認知症予防の効果がある」
「△△は、老化防止効果が強い」

などという実験や検証データの紹介が毎日のようにメルマガで配信されてきます。さらに科学的検証などで各々の食材の中に含まれているどの物質にその効果の原因があるのかを突き止めて紹介されます。すばらしいことです。「だから○○や●●や△△を積極的に摂りましょう」という結論になる。

ところがその後、必ず科学者や医者が考えるのは、「この原因物質だけを取り出して高濃度に精製させたい。それが実現すれば、予防医療の最先端だ!」という発想です。でもこういう発想がこれまでことごとく上手くいっていないという現実を認めなければいけません。上手くいかない理由は、人間のカラダの仕組みがそう単純ではないということに尽きるだろうと思っています。”ゆらぎ”とか”不純物”とかいう曖昧で科学的な計測や意味づけがむずかしい自然界のわらわらの関わり合いがあってこそ、初めて効果的に作用しはじめるもの。もともと生きとし生けるものに『ムダなモノ』など存在するはずがないのですから、それを考えた上で突き詰めると、予防効果の目的を充たすために良いものだけを食べる、という行為そのものが虚しいモノに思えてなりません。

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「自褒めのススメ」

定期掲載を始めたコラムの今月号が発行されましたので、転載します。ま、内容はここに書いたものを並べ替えただけだから、ちとはずかしい。

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「自褒めのススメ」

体温をはるかに超えた夏の猛暑にいじめられた後、大地震から半年を耐え抜いた疲労感が一気に押し寄せていることと思います。わたしも今年は疲れ果てました。こんな時は、ココロもカラダもバランスを壊してイライラしがちです。健康管理も仕事も思うようにいかないことがたくさんあります。こういう場合、わたしはとことん自分を褒めることにしています。

自分なりに生活の見直しをして自分なりに頑張っているのだけれど、健診結果は今ひとつ良くならない。医者からも保健師からも「まだ努力が足りない」「やったうちに入らない」と言われて打ちひしがれている人、たくさんいるでしょ? ゴルフで、ヘタなりに練習をして、バンカーから一度でリカバリーできたとか初めてパーが取れたとか大はしゃぎしたら、「で、結局スコアはいくつだったの?」「まだまだだな」と鼻で笑われて凹んでしまう状況に似ています。そんな雑音にへこたれることはありません。いつも挫折していた自分が今回は頑張れたのだから、自分を素直に褒めてやってください。“日々の空腹感が楽しみになってきた自分”“動かずにはおれなくなってしまった自分”に対して「オレって、すごいぞ!」とこっそり自褒めしてやれば、それだけでスッキリできます。

例年にも増して忙しい毎日。ふと気付けば、なんか自分だけ他人よりたくさん仕事を押し付けられている気がしないでもない。ぎっちり詰め込まれたスケジュールにため息をつきながら粛々と仕事をこなしていると、アテンダントのお嬢さんが申し訳なさげに診察室のドアを開けることがあります。これは、予定になかった仕事をさらに頼まれることを意味します。以前はそれだけで腹が立っていました。「担当者が決まっているのに何故そのしわ寄せをオレがしなきゃいけないの?」・・・苛立ちの空気に気圧されてそっとドアを閉めるお嬢さん方、本当に申し訳ありませんでした。今は、ちょっと迷惑そうなポーズは取ってみますが、ちゃんと何でも引き受けます。昼休みを少し削ることもたまにはありますが、そんな時にはしっかり自褒めすることにしています。「人一倍働いて文句ひとつ言わないオレって、カッコいいよね! みんな、オレに惚れるなよ!」みたいな。このセルフケアはとても大事です。むかしは夕方になると深いため息で萎れた顔をしていましたが、最近は「今日も良く働いた。エライぞ、オレ!」と最後に褒め殺して締めくくるので、疲れは残しません。

他人に評価してもらおうとすると思うようにいきませんが、自分で自分を褒める分にはどこまででもつけ上がれます。自惚(うぬぼ)れるって、とても大事な処世術だと思います。

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やりよるな。

腎結石にはジェットコースターが有効?

この題名を見て、年に数回排石するわたしが研修医時代に入院してビールを飲みながら縄跳びしたり、ボーリングに行ったりしていたのを思い出しました。まさか、腎結石患者をジェットコースターに乗せて検討したのかなと思いましたが、書いてあることを読んだら、全然違っていました。

3Dプリンタで作った腎臓モデルをバックパックに入れてジェットコースターに60回乗り、その排石率を検討したというもの。ジェットコースターはウォルト・ディズニー・ワールドのビッグサンダー・マウンテンとスペース・マウンテンを使用したのだそうです(米ミシガン州立大学のDavid Wartinger(The Journal of the American Osteopathic Association10月号))。

「結石の排出率は、腎臓モデルをジェットコースターの前方座席に乗せた場合は約17%、後方座席に乗せた場合は約64%まで上昇した」そうで、Wartinger氏は、「小さな腎結石のある患者では、中等度の強度のジェットコースターに乗ることが有益になりうる場合がある。結石が詰まる大きさになる前に排出できれば、手術や救急科受診を避けられる。結石の破砕術などの治療を受けた後や、妊娠を計画する前にジェットコースターに乗れば、結石が大きくなるのを予防できるかもしれない」とコメント。

結果はよく分かりました。腎臓結石のヒトは治療としてジェットコースターに乗りましょう!ってことで・・・でも、この研究、どう考えても教室員の皆さんがディズニー・ワールドのアトラクションに公費で乗りたいという研究デザインですよね。やりよるな(笑)

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前のめり

うちの女性スタッフさんに、早足で前のめりの格好で歩く人が何人かいます。云い方によってはセクハラ、パワハラになるので黙っていますが、その格好、早めに改めないと腰のくびれがなくなりますよ。総じてとても真面目で多くの仕事をこなし(だから早足なのか)、いつも低姿勢(いつも礼をしているから前のめりになるのか)、とても優しい人柄の人が多いように思いますが、前のめりになっていると腹筋も背筋も使いません。筋を緊張させていないとすぐに筋肉がなくなり、一方でお腹と腰には脂肪細胞がみるみる増殖します。それは想像よりはるかに凄まじく速く進みます。

高齢になると背中が曲がり、より一層腹筋がなくなります。天皇陛下然り、現役で洋裁をしているわたしの義母も最近背中の曲がり方が目立ってきました。これは年齢が上がればある程度は仕方のないことなのですが、若い時から意識して胸を張って歩くように心がけておかないと、見た目年齢が進み始めるまでに時間はそうありません。わたしも少林拳を習い始めてからかなり姿勢を意識するようになりましたが、それでも姿見や窓ガラスに映る姿はまだまだ少し前かがみ気味です。かなり大変な作業ですが、地道にやっておいてほしいと願わずにはおれません。

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年報編集

また、面倒くさい時期がやってきました。うちの施設の前年度分の業績報告書(年報)を作成する時期です。各項目ごとの担当者が集計をして表・グラフと文章にまとめたのち、わたしたちが内容チェックをして合格を出すのですが・・・。

内容や分析方法は同じですが、担当者は毎年入れ替わります。ここが問題なのかもしれませんが、毎年同じようなやりとりの繰り返しです。彼らは「これこそがわたしの作り得る最高最終の原稿です」というものを提出するどころか、どうせ訂正されるのだからと、ザックリととりあえず形にしただけの原稿を提出します。赤ペン先生になってそれを必死に校正してあげるのですが、どうもその赤ペンを書き直しさえすれば「ほい、完成!」と思っているフシがあります。冗談じゃない! 何が書かれているかよくわからない混沌(カオス)をとりあえず整理して道が見えるようにしただけなのだから、これからが担当者の腕の見せどころじゃないですか! 見えるようになって初めて正しいのか間違っているのかが分かるというもの、何でそんなレベルをわたしがしなければならないの?と思いながら、ついつい毎年何度も赤ペンを入れる羽目になります。そして何回めかの赤ペンのときに小さな数字の間違いに気づく。こういう数値統計の取り組みの中で一つでも数値間違いが見つかったら、もはやその冊子一冊の中身がまったく信頼できないただのゴミクズになってしまう・・・そんな大変なことを扱っているのだという意識をもっと持ってほしいと思います。

それともう一つ。先日ここで紹介したように、ディスプレイ上の文字と紙に書かれた文字は、その情報がアタマに入り込む時点で違う捉え方をします。画面上の文字は全体の流れの把握、紙に書かれた文字は間違い探し、目的が違うものなのだからパソコン上で作り上げたものを「よしできた」と印刷てそのまま提出するのはやめてほしい。一度か二度その紙に書かれた最終稿の文字を読み返しましょ。ディスプレイ上では違和感のなかった文章の中にどこかおかしく感じる部分が絶対に見つかります。最後の仕上げ~散髪屋さんが最後の最後に最終チェックして最後の櫛とハサミを入れる感じ。自分の作った作品なんだから、粗末に扱わないでください。

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いまさら内臓脂肪論議?

内臓脂肪は皮下脂肪よりも心疾患リスクを上昇させる

「内臓の深い部分に隠れている腹部脂肪のある人は、皮下脂肪の多い人よりも心疾患リスクが高い可能性があることが新たな研究で示唆された」というアメリカからのこの報告を読みながら、「何を今さら?」と思うのは、私たちが日本人だからでしょう。諸外国がメタボの基準に『腹部肥満』ではなくて『肥満』を採用する中、日本だけが頑なに『内臓脂肪肥満』⇒『腹部肥満』にこだわってきたので、世のおじさんたちおばさんたちはみんな健診といえば『腹囲計測』⇒内臓脂肪蓄積のチェックということにもうなれてしまっています。

皮下脂肪蓄積より内臓脂肪蓄積の方がアディポサイトカイン(脂肪細胞から分泌されるホルモン)の働きを破綻させやすい、という事実にやっと目を向け始めた感のある欧米と、内臓脂肪トラブルだけでなく太っていないマルチプルシンドロームに目を向けるべきと云い始めた日本と、動脈硬化に関する対処は次の段階に入った感があります。

まあ、欧米の場合は脂肪の種類云々の前に、「何でも良いから、とにかくやせろ!」と云わざるを得ない連中ばかりだから、たしかに状況が全く違っていたことも、今頃こんな研究が注目を浴び始めた背景にはあるのかもしれません。

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原因究明

先日、地元経済誌のインタビュー取材に応じたヤツが活字になって発行されたのですが、読んでみたら同じ内容の文章の重複が20行以上続き、さらにわたしのプロフィールがひと昔前のになっていまして、ちょっとガッカリしました。うちの病院の事務担当者にそのことを話したらえらい恐縮して、先方に問い合わせ。「どうしてこうなったのかきちんと調査して改めてご報告させるようにしました」というメールが届きました。

いやそんなことどうでも良いんだけどな、と思いながらそのメールを整理。だって単純なコピペミス、単純に締め切り間近のゴタゴタで校正するヒマがなかっただけ、それ以上の原因なんてあるはずもない。わたしの投稿文がいじられたわけでもなければ、もともとそこの会社の雑誌なのだから、みっともない思いをするのは私ではなくて相手。しかも相手が原因究明して改善策を講じようが講じまいが、今後わたしに何の得もありません。

そう思いながら苦笑いしましたが、たしかに若い頃はそういうことにとてもこだわって、「お前らいい加減な仕事してるんじゃねえぞ!」とばかりに、きちんとレポート書かせたりしていたなあ。自分の腹の虫が収まらなかったから意地悪したかったんだろうかなあ、などと遠い昔の自分の仕打ちにちょびっと反省。

ちなみに、プロフィールのミスは相手がうちの施設のホームページから抜粋したとのことで、結局うちのホームページ作成担当者のミスだということが判明しました。「春に更新したのになんらかの理由でリセットされていました」という云い訳と合わせて、春に本当に更新したんだゾと云いた気な履歴画面写真が送られてきましたが、そんな云い訳なんて何の意味もないから、別に要らないんだがなあ。自分の仕事に対するエクスキュースのためにするのかなあ。

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それは食べ過ぎです

「やっぱり運動不足ですね? 」

太ったとか、腹が出たとか、脂肪肝になったとか、内臓脂肪が増えたとか、人間ドックの結果が芳しくないとき、受診者の第一声は必ずコレです。ここ5年以上、ずっと変わりません。テレビの健康番組の教育がよほどしっかりしているのでしょうか。

でも、そんなときわたしは顔色ひとつ変えずに「いや、基本的には、食べ過ぎですね」と突き放すことにしています。だって、そうなんですもの。「いや、そんなに食ってないんだけどな」とこれまた決まって口を尖らせて反論してきますが、「だって、腹が減って目が醒めることことなんかないでしょ」と云うと、やっと黙ってくれます。

よほどの偉い役員さんか寝たきりの病人か、あるいは極度の引きこもりかでない限り、現代人は意外に身体を使っています。『運動量』は少なくても『身体活動量』はそれなりです。でも、それに見合う以上のものを食っているからプラスバランスになる。極めて明白な事実。「今まで毎日運動してたのに、震災以降フィットネスジムが閉鎖してしまってできなくなったから」と云うヒト、運動をしなくなったから太ったのではなく、運動しなくなったのに同じ量食ってるから太ったのだということも自明。

いや、嫌がらせで云っているのではなくて、原因を運動不足に転嫁する限り痩せやしない。こんな輩は、運動できない云い訳を探すことに執心するか、運動を始めてもちっとも痩せない、おれはこんなに努力してるのに成果が出ないのはなぜか?と騒ぎ始めるかです。痩せたいとか、脂肪肝を良くしたいとかいうのが目的なら、食事量を減らすことに楽しみを見出さないと解決しません。運動を再開しながら以前より食う量を減らしてやる、そのきっかけを作るためには、食べないことに頑張る自分、腹が減っていることを実感している自分の姿を自分で眺めるのが一番早いのですよ。

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競争よりも共存の時代?

今年の熊本地震で日本を代表する半導体メーカー三社が揃って壊滅的な被害を受けて製品製造ラインを一時停止せざるを得なくなったことを教訓にして、今回のような有事の際にはライバル社同士がお互いに協力して窮地を乗り切るシステム作りを検討し始めたということをテレビニュースで知りました。

『ライバル社同士が自社の企業秘密の一部を公開して協力する』・・・ひと時代前には考えられないことです。互いに腹の探り合いをしてこっちのノウハウは教えたくないけれどあっちの企業秘密はできるだけ提供させたい・・・お互いにそうだから結局うまくいかない。企業合併でも、必ずそこのところがネックになってきました。

ただ、共存して市場を二分していた企業の一方がコケた時、もう一方の企業はラッキーかというとそんなことはありません。全てのしわ寄せが一気にやってきて、ほとんどまかないきれなくなるのが目に見えています。ライバルがコケるのは大迷惑なのです。今回のワクチン製造メーカーの不正騒ぎで迷惑を被るのは、残りを作っていた企業だけれど、そこでは到底補いきれないから国民みんなが迷惑することになります。食品不正でもそう。そしてわたしたちの世界でもそうです。

むかし、典型的なライバル病院で心筋梗塞の急性期治療の数や成績をいつもうちと競っていたA病院の部長先生が急病で倒れて入院されました。世間からは「これでしばらく安泰ですね」などと悠長な言葉をかけてくれましたが、とんでもありません。急に心筋梗塞患者さんが倍増しても治療が追いつくはずないのです。結局、市内の救急治療を行える複数の病院で協力して急場をしのぐ羽目になりました。幸い、数ヶ月後に部長先生が現場復帰してくれたおかげで共倒れせずに済みました。

ライバル企業の秘密を掴んで、騙したり蹴落としたりして上にのし上がるような野心家の管理する会社は今でも存在するのでしょうが、お互いに切磋琢磨しながら業界をリードしていくという考え方は、単なる理想論ではなく、今ではお互いが生き残るために必要不可欠なコンセプトのように思います。

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額が曲がっている

診察室の壁に掛けられている額が、微妙に曲がっているのです。ずっと昔から掛けられている(このセンターができたときから掛けられている)のですが、いったいいつから曲がっていたのだろう。気にならないといえば気にならないし、もしかしたら震災以降、気にする余裕もなかったのかもしれないなと思いながら、先日、若いスタッフに、「これ、曲がってるよね」と云ったら、「そうですか?真っ直ぐじゃないですか?」と云われました。「だってほら、壁紙の継ぎ目の縦線と額を比べてごらんよ。少し左に傾いてるでしょ!」とムキになったら、「・・・そうですね」と答えて、興味なさげに出て行きました。

はい。確かに、どうでもいいことです。その程度のこと、曲がっていてもいなくてもどうでもいいことです。そしてそれがそんなに気になるなら、自分で納得できるまで修正すれば済むことです。はい。

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塩サバ弁当

ライザップで激ヤセしたアイドルのお嬢さんが「塩サバを好んで食べていた」という記事を見つけました。低カロリーでヘルシーだという理由だった気がします。それを眺めながら、つい先日、職場の売店で買った塩サバ弁当のことを思い出しました。

久しぶりにお弁当を買いに行きましたが、いろいろ並んでいるお弁当の中からわたしが選んだのは『魚弁当』・・・妙に焼き魚が食いたくなったからです。小さな切り身の塩サバがわたしの目に留まり、どうしてもそれが食いたくなったわけですが、買ってしまった後で後悔することになりました。そのサバが想像を絶する塩っ辛さだったからです。 世間では、こんなに塩っ辛くしないと売れないのかしら。そういえばその他のおかずも総じて味が濃いし・・・と自分を納得させようとするものの、それでもやはりあれは酷いだろ!と思ったもので、帰ってから妻に云いつけました。そうしたら、妻曰く、「そうだよ。お弁当に入っている塩サバとシャケは、塩辛すぎて食えたもんじゃない。スーパーで売ってる塩サバもね。だからわたし、絶対買わないでしょ!」と。やはりそうなんだ、わたしの舌が薄味に慣らされただけではなかったんだな。でも、だとすると、どうしてこんなに塩辛くする? 腐らないようにするため? 大汗をかく肉体労働者にはこの程度の塩辛さが必要だから?  理由はわからないけど、店頭に並ぶということは、その味でなければならない何かがあるのでしょう。他人の食べ物の嗜好にまで口出しする気はないけれど、でもやっぱりこんなの食わない方がいいと思う。

わたしは学習しましたから、二度と塩サバ弁当には手を出しません。食うなら自宅か小料理屋で。この小料理屋さんの味付けもまた最近濃くなっているところが多くなった気がします。健康食時代に逆行している感じがするけれど、もしかしたら、世間が健康健康と云って薄味だらけになってきたから、「ホントはもっとパンチの効いた濃いのが食いたいんだよ!」と思っている皆さんの要求なのかも。でも、それを加味しても、やっぱりあの塩サバは、塩辛かった。

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楽しむこと

中年期の心臓の健康にはカロリー制限、運動どちらが有効?

「運動不足な中年者が心臓を健康な状態に保つには、カロリー制限による減量と運動のどちらが効果的なのか?」という研究報告(米セントルイス大学Edward Weissら、American Journal of Clinical Nutrition 9月号)。

わたしは当然、「両方一緒じゃないと効果は少ないだろう。どちらか一方だけというなら、やはりカロリー制限かな」と思いながら読んでみました。ところが、あに図らんや、結果はどちらか一方でも両者併用でも、減量がある程度できていればどれも同程度の効果があった、という結果でした。

「定期的な運動と低カロリーの健康的な食生活はいずれも、たとえ減量ができなくても心血管疾患のリスク因子を改善することが知られている」 「実際には、“何を行うか”よりも“どれだけ減量できたか”が重要であることがわかった」

ま、たしかにそうでしょう。結果をもたらすのに『何をするのが一番楽で、効果的なのか』というノウハウを知りたいのですから。だから、「運動とカロリー制限の両者が重要である点に同意しており、これらを日々実践する成功の秘訣は”楽しむこと”だと強調」していたという米テキサス大学サウスウェスタン医療センター臨床栄養部門長のLona Sandon氏のお話がすべてか。

最近、生活習慣病の管理のベクトルがやっと”楽しむこと”に向き始めた感じがします。10年以上前からずっとそれを主張してきたわたしとしては、うれしい限りです。

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5秒ルール

食物を床に落としたときの「5秒ルール」の真実

「接触時間がそれぞれ1秒未満、5秒、30秒、300秒の場合にわけて、面から食物への細菌の移行率を評価した。128種類のシナリオを各20回、計2,560回の測定を行った」結果、「細菌の移行率は、細菌に汚染された面への曝露時間の長さと、食物の水分によって上昇していた。ただし、細菌汚染は1秒未満でも起きうることも判明した」という報告。研究をしたのは米ラトガーズ大学(ニュージャージー州)のDonald Schaffnerらで、Applied and Environmental Microbiologyオンライン版に9月2日に掲載された、とCareNetに紹介されていました。

「5秒ルール」(わたしの周りでは「3秒ルール」だった気がするが、あれはバスケットボールのルールとわたしが混同しているのか?)・・・『食べ物が床に落ちても5秒以内に拾えば大丈夫』というやつ・・・これが本当かどうか検討して論文として発表するヒトなんているんだな、ということに感心しました。

感染は、起きるに決まっているじゃないですか。床の汚れ方と落としたモノの質によって程度が違うのも当たり前。大事なことはそういうことではなくて、『落ちたモノを拾って食ったヒトが病気を発現するかどうか?』でしょ! ちょっと汚くてそれを口にしたら細菌が体内に入るとしても、それくらいでは病気にならないのが元気な証拠。そうやって免疫力が付いてくるのだから、床に落ちてもすぐ拾って食べなさい!というしつけが「5秒ルール」の本質だと捉えていましたから、こんな研究報告がまことしやかに世に出てくることに異常な違和感を感じます。

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災害報道はむずかしい

昨日、愛犬を連れて南阿蘇のドッグラン広場に行ってきました。秋晴れの抜けるような青空でした。2日前に阿蘇山が36年ぶりの大噴火を起こして警戒レベルが3に引き上げられたばかりでしたが、翌日には規制が緩和されましたし、新たな噴火は起きないままです。陽気も良く、道中の車の数もいつになく多かったし、広場のある道の駅にはたくさんの観光客が来ていました。大地震からもうすぐ半年になります。先月、やっと山頂までの道路が一部再開したばかりでしたから、この噴火騒動は地元の人たちにとっては大問題です。観光客が遠のくこと、キャベツやイチゴなどが全滅してしまったこと・・・ホントに踏んだり蹴ったりです。

地元の被害は甚大ですが、それでもこれから復興を目指す上で、風評被害は困ります。TV報道を見ているとよほどインパクトのある絵が欲しいのか、灰色になった大地や灰をかぶった家畜や、噴石で割れたガラス窓ばかりを何度も映し出しますが、どれも噴火直後の写真ばかりです。翌日に遠方から草千里まで来ている観光客の姿を映したテレビ局はいくつあっただろうか。私たちが訪れた久木野村はちょうど裏側になりますが、風景に灰の姿はほとんどありませんでした。こういうところをもっと積極的に映し出してほしいものだと思いました。

地元でないとわからないこと、きっと長野の火山爆発のときに、わたしたちが心に描いた心配を地元の人が「離れているから心配ない」と答えてくれたのも、こんな感じなのだろうなと思いました。報道は、台風報道でもそうですが、インパクトにばかり頼らずに事実を粛々と伝えてほしい。現場に居ない”専門家”を呼んで必要以上に不安だけ煽るのは止めてほしい。心配要らないところと深刻なところの線引きをもっときちんと伝えてほしい。その一方で、本当に被害を受けているひとたちへの支援活動は別物としてきちんと報道してほしい、と思いました。

ちなみに、わたしが実家に帰るために使う国道57号線は県境や竹田方面まで、普通に普通の自家用車でも通行できるのでしょうか?そういうこと、もっと教えてほしいものだわ。

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過労死に思う

電通の若い女性社員が自殺した事件が話題になっています。『過労死』や『ブラック企業』という単語はひと時代前には存在しなかったかきわめて特殊な世界のコトバでした。今は、過重労働に対しての産業医面談の義務だとか、労基のきびしい指摘だとか、日常で当たり前のように問題が勃発していますので、状況は相当深刻なのだと思われます。

先月、うちの職場の夏の健診がありました。夜間勤務や放射線暴露の可能性のある仕事をする職員は年2回の職場健診が義務付けられています。2週の間、毎日50人以上の職員の診察を受け持ちましたが・・・そのときに驚いたのは、診察を待つ間、待合室の椅子に座った若い職員の半数以上(友人と談笑していないヒトのほとんど)が、居眠りをしていたことでした。爆睡していて名前を読んでも気付かないヒトも・・・。15年前まではわたしもこの世界にいたのでその過労さ加減はほぼ想像はできますが、ここまでみんなが疲れている異様な光景を目の当たりにして、コトはホントに深刻なのだなと思いました。

”ヒトの命に関わる救急医療の現場は、それが当たり前。自分で選んだ道なのだからしょうがない”と云われてきたわたしたちは、『ブラック』な環境がこれから変わることを期待するよりも、それがイヤなら止めて他に移ればいいと思ってしまうところがあります。過労とかうつとかいうのは、その場から逃れてしまえば解決すじゃないか!と。でも、選び抜かれた優秀な若者たちがこぞって疲れ切っている姿を眺めていると、「やりがいのある仕事だから!」と云うだけで乗り越えられるものだろうか?という不安に襲われます。うちの施設でも、労働環境改善委員会ができました。何かが変わっていくことを期待しています。

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三欲

「先生がいつも云っていた『ムダに動く、ムダに食わない』を実践しようとがんばっているんですけど、いまだにうまくいきません」

毎回結果説明のときにわたしを指名する受診者さんが開口一番、そんなことを云ってくれました。うれしいことです。「そんな悟りを開いた修行僧みたいに完璧にできるはずがありません。できたらこの世から卒業してしまいます。でも、できなくてもいいから、できるだけ意識して生活するといいと思いますよ」とアドバイス。そして、「実は今はさらにもう一つ加わっています。それが『睡眠』です」と付け加えました。

以前にも書きましたが、「生活習慣病の克服は運動と食事だ」という時代は終わり、それに加えて睡眠と腸内フローラのコントロールが必須である、というのが常識となっています。メタボや生活習慣病の予防は『ムダに動く、ムダに食わない、良い睡眠をとる』・・・きわめて簡単なことなのです。簡単なことなのですが、これがむずかしい。どんなに抑えても湧き出てくる『食欲』、もともと存在しない『運動欲』、現代社会では自由にならない『睡眠欲』・・・この三つの欲を制御するなんてこと、煩悩のカタマリである凡人にできるはずがないのです。それでも、少しでもがんばって自分のモノにしていこうとする自分自身に酔いしれる。

なかなか、いいんじゃないでしょうか。

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「定期的な運動習慣」

「定期的な運動習慣」の価値を金額に換算すると…

CareNet10/3配信号によると、「定期的な運動習慣をもつことにより、心疾患のある平均的な成人患者では年間2,500ドル(約25万5,000円)、心疾患のない健康な人でも年間約500ドル(約5万1,000円)、医療費を節約できることがわかった」という。アメリカの18歳以上の米国人2万6,000人超の2012年のデータを追跡したものだそうです。

研究者のことばを借りると、「適切な身体活動は、疾患リスクや医療費を低減するための最良の薬ということだ。心疾患や脳卒中と診断された患者などのハイリスク群であっても、定期的に運動していれば、入院や救急科受診、処方薬を必要とするリスクがはるかに低いことがわかった」といい、「活動量の低い心疾患患者のうち20%が運動目標を達成すれば、米国の医療費を年間数十億ドル節約できると推定」されたというのですが・・・。そんな単純なはなしではなく、日々運動をする習慣ができている患者さんは、生活リズムや食事やストレスなど、その他のいろいろを改善させる意識ができているに決まっていますから、やはり総合的な「包括リハビリ」の成果だと云うべきなのだと読み解きました。

もっとも、まずは運動習慣から・・・「がんばって運動はしているけど、他は何も変えない」という人も、無意識のうちに生活は自ずと変わるものだし、運動習慣ができると他にもがんばってみようかなと積極的になるものです。行動変容のきっかけ作りにはこの金額換算の成果発表は有効なのかもしれません。

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電子タバコ

「半年前にアイコスに替えたので今は禁煙が継続できています」と胸を張って話すアラフォー男子の受診者さんを眺めながら、なかなか悩ましい問題だなと思わないでもありません。数年前に電子タバコが世に出てきた頃には、それなりに話題になったので喫煙者にも非喫煙者にも認識され物議を醸し出しました。「ニコチンフリー」と謳っておきながら実際には微量のニコチンが含まれているとか、その他の有害物質は含まれているのだから『無害』と謳うなとか、副流煙の心配がなく自分だけの問題なのだから自己責任に任せてほしいとか、結局禁煙にはつながらないとか・・・。それでもブームというものはすぐに廃れるモノ。世間の興味は減ってきましたが、それはつまりそっと市民権を得たという証です。実は今、喫煙者の間ではかなりのブームなのだそうです。禁煙ブームや嫌煙運動の煽りも受けて、さらに各企業が改良型のより健康に良くて(「健康に良い」という表現はおかしいか?「健康被害が少ない」が妥当か)おいしい(いろんな意味で)商品を発売しています。JTも参入してきました。

そこで今、どうなのだろう?「電子タバコにした」→「良いことですね」と云ってあげて良いモノだろうか?今回、CareNetに<電子タバコの使用増加と禁煙成功率>という題名でBMJの論文内容が紹介されていたのを読みながらそんな疑問がわき起こっていました。そこでグーグル検索。古い記事を避けて、今年の記事を二編ひっぱてきました

流行の電子タバコ、健康にいいのか?医師の視点
【電子タバコは害なの?】ニコチンなしは有害?無害?

で、結局どうなんだろうなあ? 無害ではないが紙巻きタバコよりはベター、でも健康被害のことは歴史が浅すぎてこれからの様子を見ないと何とも云えない、若者がタバコに手を出すきっかけになる懸念とカートリッジ交換でドラッグをすり替える輩が出ないかという懸念・・・そんな感じなのでしょうか。禁煙の導入ツールとしてはいいのでしょうが、少なくとも「そろそろ健康を考えよう」と禁煙宣言したわたしの大学時代の友人は電子タバコにして久しい。止めはしないようだ。

ところで、ネオシーダーを手放せない友人もおりますが、こっちはどうなんでしょうね。

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瞑想

先日、久しぶりにNHKガッテン!をつけたら<ボケない!脳が若返る「めい想パワー」SP>というのをやっていてつい見てしまいました。

認知症対策としての瞑想のノウハウだとか、最近どうも心身ともに冴えないのが瞑想で治るかなとか、そういうことにも興味はあるのですが、むしろ「瞑想の何がそうさせるのか?」ということと、最近あちこちの方向からわたしに向かってやってくる『マインドフルネス』という単語に奇しくもまた出会った驚きとにアタマを巡らしながら見ておりました。

ありとあらゆることを行う『前頭前野』と記憶の番人『海馬』との関係、とてもクリアカットに説明されていました。何かを考えるたびに前頭前野が海馬に情報を求めにいくから海馬が疲れてやせ衰えていく・・・何も考えなければ海馬は元気に復活できる。だから、たとえば「呼吸することに神経を集中させる」と良いのだということ。それと海馬は寝ている間に情報の整理をするから、勉強や練習をしたらすぐに眠ると記憶が明瞭になるのだということ(これは以前ここでも書いたことがある)。この2つだけでも覚えおくとよろしいかと思います。

この番組を元に、『瞑想』でググるといろいろな記事がヒットしました。一部ご紹介しておきます。

瞑想のやり方やコツとその効果を、できるだけ詳しく言語化してみた
ガッテン!1日3分の瞑想で脳も体も元気に!
ためしてガッテン!貝谷久宜さんによる瞑想・マインドフルネスの仕方

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「さようなら、ありがとう」

緩和ケアを受けるために東京から身内のいる熊本に帰ってきた同級生が、昨日安らかに逝きました。fbに「いよいよ最後が近い実感がある」と最期の挨拶をしたのが土曜日(10/1)。病室に訪れてくれた人と全部記念撮影してfbにアップしていた彼が最後にアップしたのが翌日の夜(10/2)。カーテンコールのようなこのアップに「生き延びた ありがとう。」というメッセージを加えたのが最期でした。見事に最期のステージを終えてマイクを置いたさすらいのロックンローラー。家族も友人も皆が静かにいつまでも拍手を送るが、緞帳は二度と上がらない。

見事な生き様でした。そして、見事な逝き様でした。

同じような知人がもうひとりいます。わたしのゴルフ仲間ですがもういい歳です。ここ数か月、食べ物が入らない、食べても吐く、と云って見る見るやせていきます。本人は逆流性食道炎だと思っていますが、たぶん末期の胃がんではないかと思われます。でも彼は検査をしません。「検査をしてもどうせ治療をする気がないから」という理由です。癌相の顔を見せながらゴルフコンペに参加する彼は「もう今回が最期かもしれません。みなさん、さようなら。ありがとう」といつも云っています。大好きなゴルフをしているか釣りをしているかパチンコをしているか・・・彼の徹底した生き様もまた見事だなと思います。

闘病の末に無念な顔をして亡くなっていく人たちしか見てきていないわたしたちには、こういうひとたちにどう対処したらいいかわからないところがありますが、心配要りません。相手の方がはるかに達観しているからです。昨日亡くなった同級生と2週間前に病室で会ったとき、「定年してからどうしようかなと悩むよ」「あと、7年か。まあ何とかなるよ」とか会話しながら、こんな話して良かったのかなと思った記憶があります。でも、そんなこと、考える必要もない・・・普通のように普通のたわいない会話をするのが相手のためにもベストに違いないと思ったことを思い出しました。

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ノーベル賞

今年のノーベル医学生理学賞を受賞された東京工業大学栄誉教授の大隅良典先生。『オートファジー』のメカニズムを分子レベルで解明したことが評価されました。

「オートファジーか~」・・・ニュース速報を見ながら独りでつぶやきました。昨年末にここで紹介した『オートファジー』のレクチャーを抗加齢歯科医学研究会でしてもらった水島昇教授は、まさしく大隅先生の門下生です。

”オートファジーの役割は、細胞質を分解してできたアミノ酸などを使って飢餓危機を乗り切ることと、細胞内の浄化作用/品質管理の2つ。生物が生きていく上で絶対に必要な機能””『オートファジー』は、細胞飢餓が起きたときに、速やかに潔く自らの細胞を分解して一時的にタンパク合成をすることで危機的状態を乗り切る作用””常に行われているオートファジーの目的が細胞内浄化で、新陳代謝を繰り返す細胞内のゴミを浄化できないとパーキンソン病などを引き起こす”

自分で書いたものをコピペしてみたけれど、1年弱ですでに知識がおぼろげです。改めて『細胞が自分を食べる  オートファジーの謎』(PHPサイエンスワールド新書)をもう一度読み返してみたいと思います。

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バックナンバー(2)

(つづき)

「楽しくなければ人生の無駄遣い」
生活習慣病放置病~健診結果のながめ方
敗北宣言~「やめられないから始めない」の真意~
落葉樹と常緑樹
特保の功罪~腹囲攻防戦の意義
諦めと風化
厄明け
三つ子の魂
月曜日が好き
人間の権利
出勤時間は哲学の時間
分別はアンチエイジングの最大の敵
腹八分め
その時が来た。
折り合い
目標体重
天災と予防医療
『自褒めのススメ』→近いうちにパブリッシュされたらアップします。

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バックナンバー(1)

このブログも古くなりました。もうすぐ丸9年になります。だから、もちろん40編のコラムは概ねここに転載してありますが読んだこともない方もたくさんおられましょう。二回に分けて全部並べてみますから、ヒマと興味がある方は読んでみてください。

その「常識」は非常識?~固定観念をはねのけるのはむずかしい~
健やかな病人になる~生活習慣病入門の心得~
もったいないおばけ
診察室は不思議な空間(1)~本当に難解な医者のことば~
「予防医学」のディレンマ~「健康運動」はホントに健康なの?
おやつと間食
自動巻きと体内時計
やせればいいってもんじゃない!
面白いものは面白い~笑顔の贈り物~
立て板に水
あいさつする病院
煩悩な日々
わかってもらう、ということ
アタマの理想とカラダの理想
心地よい空腹感
さりげないエスコート
マスク小僧たち~目は口ほどには物言わず。
時刻

『「メタボリックシンドローム」に喧々囂々』
『ちょい不良オヤジに最敬礼』
『ハードボイルド派に明日はない』
『「春眠不覚暁」の危険な落とし穴~真夜中は別の顔?』(未公表)

調べてみたけど最後の4編は未収録・・・せっかくだから、近いうちにアップします。もう廃刊された雑誌の分です。著作権は問題ないでしょ。

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コラムの質

この約10年ちょっとの間にいくつかの機関誌に掲載されたわたしのコラムが、今月掲載分を含めてちょうど40編になりました。次のネタを考えるうえで今までの文章を読んでみたくて、たまたま保存していたものを改めて取り出してみたところです。自分の施設の機関誌に18編、創刊されてすぐに廃刊になった雑誌に4編(1編は未発表のまま)、そして現在投稿を続けている某団体の機関誌に18編です。

いや、実は、2年ほど休止していた投稿を今年の初夏から再開させてもらったのだけれど、何か内容に深さがなくて陳腐な安っぽい文章になってきた気がしてならなくなったのです。だから、昔はどうだったのか、もう一度初心に戻ろうという想いで40編のコラムを順番に読んでみました。

自分で云うのもなんですが、いい仕事してます(した)ね。自分の書いた文章なのについ読みふけって、感動して涙したりして。どれも冒頭がいい。そして見事に起承転結が構成されているし、ウイットに富んでいてなかなか深い。当たり外れなく毎編が傑作です・・・ホントにわたしがこんな文章書いたのかな?と自分を疑いたくなるものも数編。

さて困った。書き物を生業にしているわけではないのだから、ほどほどで良いことはわかっていますが、あまりに質が落ちていることに気づいて、かえって次が書けなくなってしまう懸念があります。少なくとも、”初心に戻る”気でいるのなら、もう少し早めに書き始めよう。内容をもっと吟味してから書き始めよう。そして、むかしのように日頃からネタを探す目で辺りを見回す洞察力を意識しよう、と思った次第です。なにしろ最近は〆切の数日前からネタを考え始めて、このブログのバックナンバーをいくつか見繕ってきてそれをつないで体裁を整えているだけなのですから。反省、しきりです。

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