「春眠不覚暁」の危険な落とし穴
最後はこれ。原稿だけ出してそのまま雑誌社から音沙汰なく、そのまま廃刊になったのでまったく日の目を見なかった文章です。原稿料ももらい損ねました(笑) これは、睡眠時無呼吸のおはなしですね。
************
「春眠不覚暁」の危険な落とし穴~真夜中は別の顔? (2007.3)
「春眠暁を覚えず」・・・つい寝すぎて夜明けに気づかない、春の眠りは心地よいものだ、という孟浩然の漢詩ですが、確かに春は眠い。朝に夢心地なだけでなく、昼下がりに猛烈な眠気が押し寄せることはありませんか。そんな方はそれが本当に春の陽気のせいなのかきちんと確認しなければなりません。実はちゃんと眠れていないせいかもしれないからです。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)を一躍有名にした山陽新幹線運転士の居眠り事件からもう5年、一時期話題になりましたが、どうも自分には関係ないかあっても大したことはないと思っている人が多すぎる感じがします。太っている人はもちろん高い確率で無呼吸を起こしています(二十歳からの体重増加量が多いほど呼吸が頻回に止まっているという報告があります)が、日本人のように顎が小さくて首が短い骨格の方は、太っていなくても加齢とともに重症のSASを起こすことがあります。難治性の高血圧の原因になることも多く、SASの治療をしたら高血圧も治ったという報告はめずらしくありません。脳卒中を4倍、虚血性心疾患を3倍、糖尿病を1.5倍起こしやすくしますし、重症SASは5年生存率を16%も低下させ、うつ病や突然死の原因にもなります。そんな重大な病態なのに本人の重篤感が薄いのは自覚症状が少ないからでしょう。厄介なことに、幽体離脱でもしない限り自分の寝姿を客観的に見ることはできません。自分はどうもないけど「呼吸しないから怖い」と妻がいう、という人が少なくないのです。最近体重が増えた人やいつも眠くて頭がすっきりしない人だけではなく、大きないびきをかく(と言われる)人、朝の頭痛がある人、朝喉が痛い人、寝相が悪い人、悪夢を見る人、頑固な肩こりがある人、インポテンツになってきた人、夜中にトイレの回数が増えた人、高血圧のコントロールがうまくいかない人などは、是非早めに検査を受けてください。
夜中には全く別の世界が存在しているかもしれません。
| 固定リンク
「心と体」カテゴリの記事
- 運動は免罪符にあらず(2024.12.06)
- 認知症予防の野菜(2024.12.03)
- 家庭内予防(2024.12.02)
コメント