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異様な沈黙に思う。

狭い道。自転車を元気に立ち漕ぎする女子高生の横をスレスレで徐行して通り過ぎる無音の白いハイブリッドカー。女子高生は車の気配に全く気づく気配もない。よく見ると女子高生は耳にイヤホン。音楽でも聞きながら脇目も振らずに目的地を目指しているようです。その光景を側で見ていると、この無音同士の危なっかしい関係にドキドキします。

最近は何しろ騒音にうるさくて、除夜の鐘に苦情が出るといって鐘をつくのを中止したり、イヤホンで曲を聞きながら踊る無音の盆踊りのニュースも見ました。あまりに異様な時代になったものです。ヒトの感覚は千差万別だから、他人に邪魔されたくないし、するなら自分に影響のないようにしてほしい、他人に迷惑を掛けないように工夫すべきというのは分からないでもないですが、でも異様です。

音刺激というのは、爽快であれ不快であれ脳に刺激を与えます。「音のないところにずっといたらボケるよ」と、よく妻に云われます。わたしはひとりで居るときにはテレビもラジオも音楽も掛けない沈黙の中で思索したり文章を書いたりすることが多いからです。その点、イヤホンを使って自分だけの世界に入り込むことは、わたしの無音思索の時間とは違うのかもしれません。

ただ、「何も話さなかったらボケるよ」というのも事実。現代社会は老若男女を問わずしゃべらない。インプットは充実しているけれどアウトプットが無い。意見はSNSの書き込みやLINEで伝えるし、目の前の人への伝言も口で話さずメールで伝える時代です。意見をアウトプットするのにコトバとして口で発する作業が極端に無くなっています。今に口は食事をするための臓器になり下がるのではないか、今に世の中から音が消えていくのではないか、そんな懸念すら湧いてくる今日この頃です。

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