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ペット

『PET検査はどれくらいの間隔で受けるのがいいでしょうか?』

先日、うちの常連の人間ドック受診者の男性に相談されました。基本、わたしはPET不要論者なので、「受けなくていいんじゃないですか」と即答してしまって、怪訝な顔をされました。だから、「うちの売り上げを確保するという営業的な意味では3年〜5年ですかね」と云い足して、一層顰蹙を買いました。

PET(ポジトロンエミッショントモグラフィ)は陽電子放射断層撮影ともいい、細胞の生理活性に近い作用のある放射性物質を体内に注入して本来入るべき部位に入り込んだものを撮影する検査です。世間では、FDG-PETをPETだと勘違いし、さらにもともと心臓や脳の糖代謝を描出して虚血を診断するために開発されたFDGをまるでガンを早期に発見するために特化した薬剤だと思い込んでいる人も多いようです。設備も薬も高いし、注射した薬がすぐに代謝されて消えていくものなので、本来は研究室レベルの最先端の研究をするためのものでした。

まあ、理屈はどうでもいいし、どう誤解してくれてもいいのですが、高い金を払う割に決して早期のガンを見つけ出すのに万能の武器ではありません。特に人間ドックのように各臓器を標的にした検査をたくさん受ける人にとって、さらにPET検査を受けることにどれほどの意義があるでしょう。「そこに異常がなければこれから半年以上は太鼓判を押せます」というものではありません。3年とか5年とかいう数字にも何の根拠もありませんから、単なる自己満足と営業収益以外の何者でもありますまい。それなら毎年したらどうか? 受けるのは勝手ですが、あくまでもその前1年間の成績発表でしかなく、進行の早いガンなら数ヶ月後には手遅れにさせます。

バブルの頃に、都会の金持ち集団相手に始まったPET検診ですが、あくまでもこの検査はスクリーニングに使うものではありません。症状や異常所見があるのに正体がわからないとか、どこかに見つかったガンの広がり具合や転移の有無を確認するとか、そういう使い方をするために、研究室から臨床現場に引き出されてきた検査なのです。そこのところをわきまえて利用することをお勧めします。

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