インスリン抵抗性のこと
先日受診したアラフォー女性の空腹時インスリン値が41.8(正常は2.7~10.4)、HOMA-R 11.0(正常は0.0~1.6)だったのにスタッフが驚いて、「この人は糖尿病でもないのにどうしてこんな高値になるんですか?」と質問に来ました。「わたしは糖尿病の専門家ではないのでようわからん」と突っ返しましたが、まあ、インスリン抵抗性が強いことを示す上ではそう珍しくない値なのではないか(健常者しか診ていないし、いままで健診項目になかったからなじみが少ないだけではないか)と感じました。
『インスリン抵抗性』というのは、そもそもインスリンの持つ本来の機能が筋肉や肝臓や脂肪細胞内で十分発揮されずに効率が悪くなって結果としてインスリンが過剰分泌されている状態です。だから朝のまだ何も食べていない状態でもすでにインスリンが大量分泌しているわけです。HOMA-Rという値はその程度を空腹時血糖とその時のインスリン値で計算して割り出す指標です。ちなみに、日本人に多いインスリン初期分泌不全の程度はHOMA-βなどで確認できるそうです。
一般的に、インスリン抵抗性の原因は運動不足と肥満だと云われていますし、メタボリックシンドロームの基本メカニズムとして捉えられていますから、高血圧、糖尿病、脂質異常(特に高中性脂肪血症)、脂肪肝などが関わってきます。だから、治療は運動と低カロリー食(食事療法)でやせることだ、と教科書には書かれています。ところがこの女性は、体型はスリムで筋肉質。たしかに食後高血糖はありますしHbA1cは正常上限をちょっと超えますが、空腹時血糖は正常で高血圧も高中性脂肪血症もありません。運動不足だと自戒してはいますが、日頃から身体を使う仕事をしています。
理屈は分かったとして、この人に一体何をアドバイスしたら良いのでしょう?せいぜい「生活リズムを整えて十分な睡眠を取りましょう」「良く噛んで食べましょう」くらいしか思いつきません。何か良いアドバイスをご存じの方はぜひ教えてください。
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