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点数とモチベーション

先日、国民的アイドルのようなフィギアスケーターが引退しました。惜しむ声もありましたが、概ね「おつかれさま」「ごくろうさま」という慰労の声ばかりが聞かれ、最後は皆が「ありがとう」と云って締めくくる。本当に国民全員が実の娘のように応援してきた子の引退でした。

やっと他人から点数をつけられて極限で生きる世界から解放される安堵感が本人にも観ている私たちにも漂っています。彼女には天性の魅せる力が備わっているので、競技スケートよりもプロスケーターとして生きていく方がきっと光ると思ってはいるのですが、もしかしたら点数で評価されるからこそギリギリまで自分を追いつめて、自分を磨き上げようと努力し、競い合うことで昇華できていたのではないか?とも思います。 どうせネームバリューだけで観客は皆が満足してくれるはずだから、点数のつかない人生の中で自分をより高められるものなのか? ちょっと心配ではあります。

競技スポーツの世界と対極にあるのが舞台に立つ役者や歌手なのかもしれません。彼らのパフォーマンスの原動力は何か? 「お客様に感動を与える」という目的は同じでも、それは競技スポーツのような競い合いではありません。基本的には自己満足の仕事であり、自分を自分の価値観でどこまで高められるかの問題ではありながら、入場数だったり興行成績だったりで評価されて何らかのランクづけをされてしまうと、結局ヒトは高い評価を求めてしまって、自己達成感とのギャップに悩むことになります。それがアマチュアとプロの違いなのかもしれません。

勝ち負けの存在、他人からの評価の存在は、ヒトを強くするのか弱くするのか。彼女の引退について考えながら、そんなことを思ったところです。

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