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何も考えない焦り(前)

物心がついてから半世紀以上の間、わたしはいつも何かに追われて生きてきました。今日しなければならないこと、明日までにしなければならないこと、来週までに、来月までに・・・いつも頭の中はそんなスケジュール帳の管理で一杯でした。

それがここ数ヶ月、ほとんど何もありません。することがないわけではないけれど、あえて考えないようにしています。少なくとも夕方家に帰ってからは仕事のことを意図的に考えないようにしています。「いつも先のことを考えて頭を常に働かせて生きなさい」と云うのは、今は亡きわたしの職場のボスの口ぐせでした。「それをしないと人間はすぐに怠惰なブタになる」「どんどん退化して堕落していく」と教わりました。だから、最初は焦りと不安に苛まれていましたが、今は慣れました。こんな生き方ではクリエイティブにもアカデミックにもなれないかもしれないけれど、おかげさまで大して腐ってはいかない印象です。うちのようなアカデミカルな施設ではそんな輩が中間管理職にいては本当はいけないのかもしれませんが。

小学校の教師をしていたわたしの父は、夕方定刻にはきちんと帰ってきていましたが、一度も家で仕事をしている姿を見たことがありません。仕事を一切家に持ち込まず、定刻に帰ったら早々に風呂に入り、浴衣に着替えて茶の間から見える庭の季節の移ろいを眺めながら自分で料理した肴で熱燗をいただき、夜9時前には床に就き、翌朝は5時には起床する。そんなでした。「一体この人はちゃん仕事をしているのだろうか」と、同じように小学校教師をしていた母が夜中まで採点やら通知表作りやらしているのを手伝っていたわたしは、そのあまりの違いにいつも疑念を抱いておりました。彼が家で小説や盆栽の教本以外の書物を読む姿を見たのは昇格試験の前だけだった気がします。それなのに、きちんと仕事をこなし、多くの教え子たちから慕われていました。 (つづく)

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