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プライドと適応(前)

職場の衛生委員会でメンタル不調の職員の話になりました。わたしは産業医として他の企業の従業員のメンタル不調の対応もしているので、意見を求められました。

わたしの正直な感想は、『身体を壊してまで今の仕事にしがみついていても何の得もないので、若ければ若いほど、早く辞めればいいのに』です。もちろん、不調の誘因は千差万別です。仕事に慣れないまま自分の力はもっとあるのに十分発揮できていないと感じている人。同じ職場の上司にいじめられたり叱られたりするのでだんだんイヤな気持ちになった人。大きな失敗をして自信をなくしてしまった人。などなど。

医療の現場では、救急医療をそつなくこなせる人間の方が優秀で格が上だという評価を受ける風潮が昔からあります。特にうち職場のような世間的にも認められた高いレベルの病院では、「それができて一人前」という機運が昔からあり、皆がその水準に達しようと努力を惜しまない空気があります。でも・・・合うか合わないかという点では、きっとそれは間違いだと思っています。もう30年弱、ここでずっと働いてきたわたしだから堂々と云えるのかもしれません。もっと落ち着いた場所で、じっくりと取り組んだ方が実力を発揮できる学者型の人。瞬時の判断でテキパキと救急をこなすよりも、一人の患者さんにしっかりと寄り添ってあげられる人間性の高い人。そんな優秀な人材なのに救急現場で適応できずに挫折するのは、そんな世間の風潮が邪魔しているのではないかと思います。「救急をテキパキこなせられる人は、そんなことくらいその気になれば簡単にこなせるはずだ」と世間は勘違いしています。全然違う道なのです。 (つづく)

 

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