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変わらない

「先生、ちょっと相談していいですか?」と保健師さんが鼻息荒く診察室にやってくるときはあまり良い話ではありません。今回は、もう何年も高度肝機能異常が続いている男性受診者のこと。もう10年近く毎年『要治療』の指示が出ていて、毎年受診勧奨をするのだけれど、未だに受診したことがない人。腹部超音波検査で慢性肝障害からやや肝硬変気味の所見が出ている人。保健師さんは熱いココロで、「何とかして受診に繋げさせたいんです」と云う。

でもね、もう10年もの間、ほとんど同じ結果なんですよね。別に良くなってはいないけれど悪くなってもいないんですよ。受診したら、毎晩楽しみにしている晩酌をやめさせられて肝庇護剤を処方されるだろうけれど、それでもせいぜい現状維持。だったら、今の生活を変えたくはないでしょうよ。そりゃ、受診したくはないと思いますし、受診先の先生も親身になってアドバイスしてくれるとは思えないんですよね。

「『良くなってはいないけど悪くなってもいない、まったく変わらないんだからそれはそれでいいんじゃないの?』なんて、そんな甘えたこと考えているんじゃないですか? そうじゃないですよ、今がターニングポイントかもしれないし、ずっとストレスに耐えてきたけどもう限界!て時かもしれないんだから、ちゃんと受診して治療を受けないとどうなっても知りませんよ!」・・・10年前のわたしだったら、絶対そう云ったでしょう。

でも、今は違います。血糖値が5年以上前から全然変わらない糖代謝異常の人とかも同じだけれど、悪化することなく維持できているのは、日頃の生活療法がうまくいっているからに他ならないわけで、無理して医者にかからなくてもいいんじゃないのかしら? もちろん、明日何かが起きるかもしれないけれど、それは医者にかかっていても同じ確率なんじゃないかと思うんです。素直にそう云ったら、保健師さんにとってもイヤな顔をされました。

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