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標準化と職人技

定期的に投稿する機関誌連載コラム夏号が発行されました。今回は完全にここで書いたものの組み合わせで新しい内容ではありません。

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『標準化と職人技』

以前、ある有名なプレミア日本酒の話をラジオで聴きました。このお酒、ちょっと他のプレミア酒と違います。普通、おいしい酒というものは腕のいい杜氏の経験と力量が作り上げた芸術品です。ところがこの酒蔵の酒はその配合の仕方や細かい作り方まできちんとマニュアル化されているらしい。「誰が作っても同じ高品質の酒ができるように」というコンセプト。それによって、世界中どこでも同じおいしい酒が製造できる、というのです。

標準化・・・それは良いことだと分かっていますが、本当にそれで良いの?という気持ちも払拭できません。職人のさじ加減で1つ1つに微妙な違いがあることもおいしい酒を造る上で大事なのではないか。私たちの仕事で言えば、担当する医者によって説明内容が変わるのは良くない、医者によって治療方針が変わるのはおかしい、だからガイドラインを作成しパスに乗っかって標準化するのがよろしい、と言う。その方が質の高いサービスが同レベルで提供できて、受ける側のメリットも大きい。ただ、それでも最後に担当医師の価値観と経験値が加わります。同じことを言われても、医師の言い方次第で違う印象になることは少なくありません。それならむしろ無機質なロボットの説明の方がマシだという意見もありましょうが、少なくとも私は、相手がヒトである以上、最後はヒトとしての対話が不可欠だという考え方を変えることができません。

先日、ある自動車部品製造会社の特集をテレビで見ました。そこの製造機械はとても繊細な動きをするのですが、その正確でソフトな身のこなしはすべて優秀な職人さんの動きを忠実に模して作成されているのだと聞いて驚きました。一番効率の良い動きは、“計算された機械的な動き”ではなくて、“経験のある熟練した職人の動き”だという結論に達したという。”職人“と呼べる人が少なくなっている現代社会では、匠の技をプログラミングして後世に確実に引き継ぐ方が得策なのかもしれません。でも、このやり方では、結局過去の成功確率を上回ることができません。匠が匠でありうる所以は、自分で試行錯誤しながら創意工夫して新しい自分を作り上げようとしていることです。100%の完成品には100%の魅力しかありませんが、匠たちは100%以上のモノを常に造り出そうとしています。進化や発展というのは、そういうことだと信じます。

AI(人工知能)は、失敗体験を蓄積しながら学習する能力だけでなく、失敗や成功の概念以上の世界に昇華する力を持ち得るようになるのか・・・将棋や医療の世界を凌駕しようとしているAIのこれからに期待してもいいものでしょうか?

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