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金の斧

金の斧

あなたがこの池に落としたのは、この金の斧ですか?
いいえ違います。
それでは、この銀の斧ですか?
いいえ、違います。
それでは、まさかこの薄汚い鉄の斧ですか?
そうです。わたしが落としたのはこの鉄の斧です。
お前はなんという正直者なのだ。褒美にこの金の斧も銀の斧も持って行くがよい。

という有名なイソップ童話を久々にテレビで見ながら、なんか異常に違和感を感じました。金の斧や銀の斧が高価なものだということは後になって冷静に考えたらわかるのかもしれないけれど、金も銀も今まで実際に見たこともないものなのだから、そんな得体の知れないヤワな素材(もともと触らせてももらえてないのだから素材すらわからないかもしれない)では木なんか切れやしない。「早く仕事を終わらせたいのだから、意地悪しないで早くわたしの愛用の鉄の斧を返してくれよ~!」というのが木こりの本音。

後から行ったうそつき木こりは最初から金をもらうのが目的だからひどい目にあってもしょうがないけれど、最初の木こりを正直者とか無欲だとか云ってもてはやすのはいかがなものか。焦っていただけじゃないのか。「無知だった」とは云えるかもしれないけれど。あそうか、この童話を読む一般庶民は、みんな金とか銀とかに価値があることを知っているから、読者に喝を入れるための話としてみんなは納得するわけか。

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