正常値の落とし穴
先日紹介した『腎性低尿酸血症』・・・「運動後の背部痛や吐き気、原因不明の急性腎障害があった時にこの病気の可能性を考えるべき」だそうですが、救急現場や内科外来で採血検査をしても異常値が見つからない可能性があります。実は、運動をすると血中尿酸値は上昇することが多いのです(脱水の影響もあるし、抗酸化物質を合成するためかもしれません)。そうなると、日頃低尿酸血症の人は運動によって正常範囲内の値になる可能性があります。救急外来で初めて会う一見のお客さんの検査結果をざっと眺めても、絶対に尿酸の異常なんて考えるはずがありません。日常を知らないのですから。
白血球減少も同じです。白血球は細菌感染やウイルス感染の時に増加しますが、日頃から白血球数が低い人は増加するとかえって正常範囲内の値になったりします。体調が悪い、熱があるという訴えで外来を受診しても、採血結果に異常がないなら”原因不明”となりかねない。
こんなこと、日頃から自分の値を知っていれば問題ないではないか、とわたしたちのように健診や人間ドックに従事している医療者はすぐに考えてしまいます。でも、一般の方は知らないか意識していない方が普通だと思っておかないといけません。健診なんて滅多に受けない人の方が多いし、住民健診や企業の簡単な健診では尿酸なんて調べないかもしれない。白血球は余程の低値で精密検査の指示でも出ない限り気にしてはいないでしょう。軽度異常や経過観察などの判定は『特に異常なし』だと捉えるのが普通・・・健診をする側とされる側のその温度差があるからこそ、数値の持つ意味の重要性を日頃からしっかりと教えなければならないと痛感する次第です。
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