無駄な検査~CEA検査
多くの人間ドックのメニューに腫瘍マーカーとしてCEAというのがあります。CEAは、carcinoembryonic antigen(がん胎児性抗原)の略称で、胎児の消化器の粘膜組織に存在するたんぱく質のこと。出生後は極微量になるはずのこの物質が異常に増加すると、大腸がんや肺がん、胃がんなどの存在する危険性があるため、がんのスクリーニング検査として人間ドックに入れられています。
ところがこれ、肺がんや大腸がんだけではなく、肺や甲状腺の炎症でも上昇しますし、膵臓や胆のうや耳鼻咽喉科領域のがんでも上昇することがあり、前立腺特異抗原であるPSAほど決め手のある検査ではありません。
CEAが異常高値だと、必ず大腸ファイバーと肺CT検査を精査として受けることを要求し、そこに異常がないと他の臓器のさらなる検査を検討しなければならないことになります。CEAだけを保険診療で定期的に検査することは禁止されています。費用と時間を費やしていろいろ調べた挙げ句に問題なかったとしても、その異常高値の値だけが残りますし、おそらく翌年も異常高値でしょう。正体も分からないのに毎年のドックの度に心が凹みます。喫煙者はたばこを止めれば正常化する人が少なくなく、この場合はまさしく肺の慢性炎症の表れでしょう。
一方、諸検査をして大腸がんや膵臓がんや胆管がんなどを見つけて治療した人もいます。でもすべてが進行がんです。CEA検査をしなくても、人間ドックでは腹部エコーや便潜血検査をしますのでそのレベルであれば他の検査で見つけられる可能性が高く、CEAだけで見つかった例はほとんどない・・・予防医療として早期がんを発見できるスクリーニング検査ではないのです。
となるとこの検査、心を凹ませるだけの存在でしかなく、商品を売る営業サイドとしては残しておきたい顔をしていますが、そもそも健診やドックでのスクリーニングとしての存在価値はないに等しいと云えます。検査さえしなければ心安らかな人生を送れる人は意外に多いことを知っているだけに、この検査、「止めてしまえばいいのに」というのが医局の意見です。
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