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平均値のおそろしさ

「日本人の肥満が増加した原因はカロリーの取りすぎだと云われてきたけれど、それは間違いである。なぜなら、最近の日本人は健康志向の影響でカロリー摂取量は明らかに減ってきているにも関わらず相変わらず肥満も糖尿病も増加しているからである」という理論に対して、「個々の肥満患者を診ていると、彼らは確実に摂取カロリーが多い」「平均で変化がないのは、痩せ(特に若い女性)と肥満の二極化の結果であり、単に平均のグラフの動向から判断するのは早計である」と慶應大学の伊藤裕先生が一喝しているのを読みました(『アンチエイジング・バトル』坪田一男著、朝日新書 p26)

こういう類のデータ分析は以前からよく問題になっていて、諸般の理論のアンチテーゼを論ずるときにあえて同じデータの読み解き方の違いを指摘することが手法として行われます。基本的に医療の現場では統計学的検証で有意差を証明しない限り普遍的な事実しては認めてもらえないのですが、まさしく日本人の肥満統計はいい例で、極端に悪いものと極端に良いものとが同等に存在すると平均点として希釈されてしまう可能性はあります(バラツキの評価はできますが)。くだんの肥満とカロリーの関係についてはどっちが真実か存じませんが、こういう統計結果の評価の仕方で真逆の結論を導き出すのだとしたら、こと予防医療のための一般市民の生活の仕方に普遍的な理論を後ろ盾にしようとすることに無理があるのではないかという気がします。やはり、健康を得るのに理屈はいらないのではないかしら?・・・そんなことを云ったら、元も子もないか。

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