所見あるが治療不要(前)
健診結果から医療機関に診療情報提供書を出したとき、一番困るのは「所見はあるが治療不要」という返信です。例えば、心電図で心筋肥大を疑う所見が認められるとか、B型肝炎ウイルス抗原が陽性でキャリアである可能性があるとか、あるいは糖代謝異常が認められる、白内障や正常眼圧緑内障を疑う所見であるとか。「所見はあるが治療不要」というのは、「診断名はつくが別に薬を使って治療するほどのものでもないからそっちで何とかしろ」というメッセージでしょう。
でも、そんなこと初めから分かっている事です。わたしたちだってプロの医者なのだから。別に精密検査して白黒つけて欲しいとか薬剤治療は要りませんかと問いかけているのではなくて、この方のこれからの人生を考えたときに、同じ検査をするとしても、健診や人間ドックを受け続けるよりも専門医のもとでフォローしてもらった方が良いと思うから紹介するわけです。指定された検査をして、「治療するわけでもないのにうちに来てもらってもすることがない」といわんばかりに健診施設に戻されると、もはやこの受診者さんの行き場がなくなってしまうんです。そこに所見はあるけれど、前回門前払いを食らわされているからよほど目立った悪化がない限り紹介状は出せないし、受診者本人も、「検査に行ったけど異常ないといわれた」と信じているから二度と受診をしたがらない。
「どうせ受診しても検査するだけで、何もしてくれないのだから、健診を受けておくのと何も変わらないじゃないか」と受診者さんは思っているし、受診された医療機関も似たようなことを思っているようですが、それは全然違います。毎年同じ健診機関で人間ドックを受けているとしても、個人個人の臓器の経過を誰かが追いかけてあげてるわけではないことをわかってもらいたい。蓄積データがあっても、それをつないで見守ってあげる人がいなければ野放しと一緒。何かが起きても健診機関は何もしてあげることはないのですから。 (つづく)
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