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専門医資格

わたしは循環器内科医として15年近く働きましたが、実は専門医資格を有していません。だから、「専門は循環器内科です」とは云えません。

実は、医学の世界で『専門医』(専門学会がその領域のエキスパートとして、知識や経験値が一定線に達していると認めた証、らしい)というのに重きを置き始めた頃、わたしは東京の病院に勤務していました。当初は暫定措置として、決められた書類を提出すれば資格を得ることができたのですが、当時は循環器内科に属していなかったためにあまりその重要性を理解していませんでした(わざわざ受け持った患者さんの退院サマリーを大事に貯めていたのに日の目をみませんでした)。その時に暫定措置の申請をしなかった者が専門医を取得するには、あらためて内科学会の専門医を取らなければならず、それは市中の救急病院で勤務している限りは難しい。いろいろな病気の患者さんを万遍なく受け持って症例数を確保しなければならないからです。それを得るために大学病院に研修に出してもらった先生もおられましたが、わたしが循環器内科医になった目的はそんな資格をもらうことではない、と諦めた次第です。

まあ、特段後悔はしていません。「専門医を持たない医師はマジメに仕事や勉強に励んでいないいい加減な医者だ」とレッテルを貼りたがる病院幹部はたくさんいますが、そんなもの云わせておけば良い。専門医資格を持ってないから減給されるわけでも辞めさせられるわけでもないのだから、特に出世したいのでなければ医者として何も困らない。もちろん、資格や役職大好きな受診者さんにはヒラの医者として見下されますし、最近の新しい専門医制度はちょっと首を傾げたくなるものです(たぶんわたしは一層取得は難しくなった)が、おかげさまで、わたしたちの世代はそれでも何とか生きていけます。今の若い先生方は、資格取りや単位取りばかりに奔走して自分のやりたいマニアックな分野は片手間でしかやれなくなるから大変だし、面白くないんじゃないかなあと思ったりします。

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