番外:還暦祝いの挨拶(6/7)
(つづき)
最後に、あと5年間(クビにならずに元気でいたとき限定ですが)を働かせてもらう上で、どうしても云っておきたいことがあります。
この17年間、予防医療の考え方もここの施設の中も大きく様変わりしましたが、ただとても残念なこと(というか不本意なこと)があります。ここの組織への不満というよりも、今の予防医療界全体に対する不満です。それは、皆さんが、「受診者さんが病気になるのを待っている」ということです。これは私の求めている予防医療とは全く違います。ご存じのように、私は判定5(要精密検査)とか判定6(要治療)とかにまったく興味がありません。「精検受診率」にも興味がありません。しなければいけないからやっているだけです。なぜ紹介状が出るかを説明したら、もう後は本人の人生なのだから、好きにしたらいいと思います。大の大人なんだから、自分で考えろ!と。判定3(要経過観察)や判定4(要再検)も同じことで、要するに「あなたは病気ですよ」と云っている。「さっさと治療を受けなさい」ということです。血圧140/90なんて、今すぐ治療しろという値です。こんなものを予備群だとか云っている方がナンセンスです。でもちょっと面倒なのは、このレベルではくすりをもらえない。くすりをもらえないくらい軽いのではなく、くすりをもらえないのにこの時期に一気に動脈硬化の進展が加速度を増すから、自分の力で努力しないといけない。一番大変な時期なのだということは教えないといけません。そんなことをしてくれるいい先生を紹介する必要はあります。でも、それは私の仕事ではありません。
私がいつも大事にしているのは、判定1(異常なし)や判定2(軽度異常)です。特に判定1は「正常」と判定しておきながら、ちっとも正常でない人がたくさんいる。血糖なんて、たぶん数年のうちに境界型になって10年もしないうちに絶対に糖尿病になる、と分かっている人が「正常」の判定の中にいる。こんな人たちこそが予防医療の最大の対象者。だけど、「正常」だから・・・もっと悪くなってから相手してあげるよ、と皆さんは云っている。それがもどかしくてたまりません。
もちろん、この時期に何かを始めてもどうせ糖尿病になりますし、最終的にはくすりがいるかもしれません。「それなら、糖尿病になってから食事療法をするのと同じじゃないか」という人がいますが、全然違うのです。今、自分の体質を知って、丁寧に好きなものを美味しく食べることを習慣づければ、食べることが「楽しいこと」のままになるし、「糖尿病」の診断が付けられてもそれはただの通過点に過ぎないことになる。食事が”制限食”ではなくなるんです。一生つきあうことになる病気のために大好きな食事を犠牲にしない生き方ができるんです。 (つづく)
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