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ナイチンゲール

「今朝来た看護師さんが、初めて『カーテン開けましょうか?』と声をかけてくれたよ」

抗生剤の副作用による出血性腸炎で緊急入院していた妻がLINEにそんなメッセージを入れてきたのは、入院から4日目の朝でした。水を飲んでも激しい腹痛と下血に襲われてプレショック状態で救急外来を受診して、そのまま病棟の個室に入院した彼女は、点滴スタンドを押しながらトイレとベッドを往復するばかり。朝になっても窓のカーテンを開ける気力すらなかったわけですが、それまで部屋を訪問して処置や検査をそつなくこなして行ってしまった若いナースの誰一人として、分厚いカーテンが締め切られて薄暗いことに何も言及しなかったわけです。「ここの病院の看護師さん、特に若いナースは見るからに余裕がなさそうで、記録を書き落とさないこととルーチンワークをミスなくこなす事に精一杯な感じ」というのがOBである彼女の感想。だから声をかけることもなく薄暗い病室の中(部屋の電灯のスイッチの位置も教えてもらったのは入院2日目の夜だったそうです)で悶々とベッドに寝ていたら、Mさんというナースが「おはようございます」と元気に部屋に入ってくるなり、「暗いですね。朝だから中庭のカーテン開けましょうか?」と声をかけてくれたのだそう。「なんかすごく元気をもらえた気がした」と夕方部屋に訪問したらそんな感想を妻は語っていました。友人にLINEしたら、「やっとナイチンゲールが現れたって感じだね」と返事が来たそうです。

もちろん最近は必要のない事には立ち入らないのが暗黙のルール。「結構です」「開けたい時には私が勝手に開けるから放っておいて」と答える患者さんも多いのかもしれませんし、必要なら患者の方から「カーテン開けてくれますか」と声をかけるもの、なのかもしれません。それでも、緊急入院して薄暗い個室で独りでいる心細さと不安感といったら尋常ではないでしょう。ナーシングの概念からすれば、命に関わるいろいろをミスなくこなせることと同等に、患者さんの心の不安をきちんと察知するのも仕事であることを忘れてはいけないぞ、とそんなことを感じた次第です。

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