味が落ちた?
「昔なつかしいあの定食屋、今もあるらしいけど、最近味が落ちたと云う噂を聞くようになってちょっと寂しい気もします」
先日、そんな話が出てきて、若いころに遅くまで働いては帰りに同僚や先輩方と行ったお店のことを思い出したりしました。もう30年以上前のこと、そりゃ、当時店を切り盛りしていた店主も高齢化したり代がわりしたりいていることでしょう。それでも長く続くというのは大したものです。
老舗の食べ物屋の「味が落ちた」ということばは他でもよく聞きます。「先代までの味が懐かしくて久しぶりに行ってみたら全然味が変わっていてショックだった」とか。「できる限り先代に教わって語り継がれた味を再現したつもりなのに、やはり同じ味を出すのは難しいです」と恐縮する若大将。
そんなことを考えていた時に、ふっと違うことを思いました。「味が変わった」と嘆く、自分の味覚が変わったということはないのだろうか。味覚が鈍くなったというだけでなく、当時若かったころには好んでいた味が歳とともに好きでなくなるということはある。自分の記憶の中の味はあくまでも当時の若かった自分が覚えている味(味覚)…それを思い出しながら現実の今の料理を口にすると思い出の味には到底かなわない。そんな要素がないわけではないだろうと思うのであります。もちろん、時代とともに社会の求める味の潮流も変わってきますから、意図的(無意識かもしれないが)に現代人の舌に合う味にアレンジするのは有って然るべきことです。でもそれ以上に、自分の舌も長い年月の間に感性を変えてしまっていて当たり前だと思わねばなりますまい。
そう考えると、30年前の味が今と変わっているかどうか、作り手が変わっていれば尚のこと、比較なんてできないのかもしれません。昔の馴染みの店に行ったとしても、昔を思い出して懐かしいメニューを作ってもらったとしても、比較はしない方がいいのかもしれない。
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