散髪屋で血圧管理
先日Medical TribuneのDoctor's Eyeで慶応大学の香坂俊先生が紹介していた<床屋で血圧は下がるのか?>はとても示唆に富んでいて面白かったです。アメリカからの報告で、52の理髪店に参加してもらい、高血圧を有する理髪店の常連客319人に対して血圧測定をし、理髪店で店主が紹介する薬剤師によって血圧管理をしてもらった場合、単に店主が生活習慣改善の指導や医師の診察予約をすることを促した場合よりも3倍も降圧効果が得られたというものです(N Engl J Med 2018; 378: 1291-1301)。参加した常連客は低所得者が多く、肥満や喫煙などの人も多くて普通の比較試験の対象に選ばれない様な人が多かったのも特徴だそうです。
このように、医者などその場に直接介在しなくても、信頼できる人(理髪師)の勧めがあって、その人のいる場所に専門家(薬剤師)が常駐して、直接管理してくれるならば、患者さんはきちんと治療を受けるのだということ。毎月必ず顔を出す理髪店が医療機関の出張所扱いになれればいいだけのことです。当たり前かもしれないけれど、「病気だから病院に行く」が事の始まりだと定義する限り病人は絶対に減らないのです。おそらくAIを駆使して自分でさせようとしてもうまくいかないと思います。もっとも、そんな出過ぎたお節介をする輩は絶対に法律が許してくれない。「何かあったら誰が責任を取る?」の答がないことに誰もが尻込みをするからです。
たしかに、地域の人間との信頼関係というのは、いろいろな理由を付けて病院に行きたがらない人たちの心を開かせてくれる大きな力を持っていますね。こういう人間関係がなくなってきて、利害関係と責任問題だけが表に出る社会をだれも望んではいないでしょうに・・・。お金を安く上げるために大量の店員が流れ作業でカットしてくれる店や評判のカリスマ美容師のいる店では、この研究は成立しないでしょう。医療は自然科学!と意地を張らず、”人情”が大事なアイテムだということを今一度再認識させてほしいなと思うばかりです。
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