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フレイル

横浜で行われた第24回日本心臓リハビリテーション学会に行ってきました。

今、突然ブームになってきた単語が『フレイル』『サルコペニア』。ロコモ(ロコモティブシンドローム)がなかなか定着しない中、予防医療の概念の中にこの単語が一気に割り込んできたのは、社会が高齢化してきたからだということは容易に想像できます。

日本老年医学会は昨年1月に、『高齢者』は75歳から!(65〜74歳は『准高齢者』)という提言をしましたが、それに引き続き今年は『健康長寿達成を支える老年医学推進5か年計画』という提言をしました。その中にも『フレイル予防・対策による健康長寿の達成』という項目があります。

『フレイル』というのは「加齢によって予備能力が減り、ストレスに対する回復力も低下した状態」と定義されます。『サルコペニア』は「加齢による骨格筋量の低下」のことであり、サルコペニアの延長上にフレイルがあることは想像に難くありません。今なぜフレイルか? 世間でメタボリックシンドローム対策が定着し、「とにかく痩せなさい」としつこく追い回されるがために、ふと気づいたら筋肉がやせ衰えて動くに動けない状態になっている。健康に真面目に取り組む高齢者ほどその傾向は強くなり、「太ること」への罪悪感が生じてきているようです。筋肉が衰えて動けなくなり、動くのが億劫になり、動かないと食欲も減退して一層筋肉が落ちて行く、というのがサルコペニアのスパイラルです。アンチエイジングの基本として、何かの機能が衰えれば、バランスを取るためにそのほかの心身の機能もそのレベルに水準を落としてしまう…これが『老化』、そしてこれこそが『フレイル』。そんな萎れた老人になると介護の世界に落ち込んでしまうから、高齢になったら若い頃とは逆に「しっかりものを食って、筋肉を養って、とにかく太りなさい」というわけです。

ダイエットに目覚めて、ちょっと太ると急に食べなくなり、みるみる萎んだ足になってしまった84歳になる義母の姿をみているとこの理屈はよく分かります。でも、「糖尿病の主治医が、太るな、痩せろってうるさく云うよ」と言い訳するので、まず医療者教育も重要なんでしょう。ただ、メタボ対策からフレイル対策に移行する指標は何なのか。『65歳からはフレイル対策が重要』とあちこちで云われるのですが、わたしの世代のあの大きなお腹オヤジにフレイル対策なんて絶対無用だと思うし、見るからに覇気のない痩せて萎んだ人ならともかく、ある時から逆の生活パターン指示を受けるようになったら誰でも戸惑います。なんか、フレイルが問題なのは今の高齢者だけで、今のメタボ世代の連中はそのままメタボ高齢者になるか、筋肉だけ落ちるサルコペニア肥満になるかに違いないというのがわたしの本心です。心配なのは、若い頃の健診でメタボに引っかからないように頑張った優等生たちだけではないかと思います。

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