健康無関心層
日本心臓リハビリテーション学会で準備されたパネルディスカッションの中に『スマートウエルネスコミュニティ』という概念のセッションがあって、興味深く拝聴させていただきました。座長の久野譜也先生(筑波大学)たちが進めている活動の紹介です。
テーマは『健康無関心層』。いわゆる『健康無関心層』は全人口の約7割を占めており、そのほとんどはそもそも健康情報へのアクセスを一切しない。例えば、死亡リスクの第4位が『運動不足』(1位は『高血圧』2位は『喫煙』3位は『高血糖』で、5位は『肥満』)であることは、世間の健康番組やマスコミ記事などで有名だけれど、彼らはそんなことは知らない。彼ら健康無関心層の中の7割は今後も運動などしようとは思っていない、ということが分かっているのだそうです。つまり、私たち予防医療に携わっている医療者や行政などが大きな勘違いをしているのは、私たちは「国民は、健康づくりの重要性は分かっているのに行動変容につなげられないだけ。そこへのアプローチがうまくいっていない」と思い込んでいるけれど、そうではない。単に、国民の大多数はその重要性など全く知らない(分かっていない)というのが真実だ!という事です。「今運動している人も、今後やりたいと思っている人も、彼らは健康情報を自分から取りに行く。でも、それ以外の人は、健康情報自体を取りに行く意思がないのです」と久野先生は強調していました。「結局これまで、医療者も行政も、この『健康無関心層』をまったくターゲットにしないままの対策を講じてきたのではないか」という事で、一番重要なのはこの『健康無関心層』対策なのだ!という取り組みを紹介していただきました。
「町(社会)を全体を巻き込んで変えてしまわなければ人は変わらない」「都市を健康にする」ということばはわたしの心に妙に響きました。残念ながらわたしの仕事は、あっちからやってくる健康に関心がある人たちの心を動かして行動変容させるということしかできませんが、国民の健康は健康に興味がある人もない人もひっくるめて町全体が自律的に動く(歩く)風土つくりが一番重要なのだということです。
理屈はわかるが、その関心のない人を動かすのは容易ではない。そのための『健幸アンバサダー』つくりや、インセンティブの取り組みなど、今後の課題についてのパネルディスカッション…聴衆は決して多くはなかったけれど、とても刺激を受けるセッションでした。
| 固定リンク
「心と体」カテゴリの記事
- 週30分?(2025.02.14)
- 大腸内視鏡検査無償化(2025.02.11)
- 認知症対策にカフェイン?(2025.02.07)
- コーヒーは朝飲むべし?(2025.01.31)
- ナッツ食ってるよ(2025.01.30)
コメント