電子カルテ(後)
(つづき)
この事例でわたしが一番問題にしたいのは、そんな大きな異常所見を見つけておきながら、直接電話することなく無機質な電子カルテに粛々と書いただけだったということです。今時は、どこの世界でもそうなのだと聞いています。「自分はちゃんと書いたんだから、読まないヤツが悪い」みたいな・・・それは、自分の仕事が「目の前の画像を正確に読影することだ」と割り切っているからなのでしょうか。自分が医者である以上、主治医でなくても「自分が助けられるものなら何とかしたい」とは思わないのかしら。今回のニュースから、そんなことを考えてしまいました。
とはいえ、放射線科医が画像読影をしてくれることはとても重要なことです。わたしが臨床現場で働いていたころ、自分でオーダーした検査は自分で読影するのが当たり前でした。だから、呼吸器科医が胸部レントゲンを見るときは肺しか見ないし、循環器内科医が同じモノを見るときは心臓の大きさや肺うっ血がないかという目でしか見ない。そのために、循環器内科の外来で定期的にレントゲン検査をしていたのに肺がんの陰影を見つけられなかったなどということは珍しくなかったと聞いています。同じ画像を放射線科医が読影すると、肺や心臓はもちろんのこと、骨や皮下組織や縦隔や、とにかくその写真に写っているすべての情報を確認してくれるのです。放射線科医の目には私たちの目には見えないモノが見えている・・・とても驚き、尊敬したモノです。
だからこそ、画像に見えている異常を「あなたは気づかないかもしれないけれど、異常がありますよ」と強調して伝えてほしい。「あんたの目は節穴だから見えないだろうな。でもちゃんと教えてあげたからね。気づかなかったら自分で責任とりな」的な意地悪はしないでほしい。面倒くさくてもお節介でも、そうあってほしい。『電子カルテ』って、そういうアナログ的で人間的なコミュニケーションをホントに希薄にさせるよね・・・それがわたしの偽らざる感想です。
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