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電子カルテ(前)

先日、泌尿器科系のがん手術を受けた患者さんに数年後の定期検査(CT検査)で別の臓器の新しい腫瘍が発見され、読影した放射線科医が電子カルテに所見を記載したにもかかわらず主治医がそれを見落とし、結果として1年後にはその腫瘍(進行がん)のために死亡した、という医療事故があったことをネットニュースで知りました。奇しくも、テレビでは放射線科が主役のテレビドラマが話題になり、芸能人のがん公表が続いて、世の中が割とゾワゾワしている中でのこの事故。

最初に目に入ったのは、「電子カルテへの記載」・・・なんでそんな重要な所見を見つけたのに直接電話連絡しなかったのだろう。そうなんです。今や大きな病院はどこでも電子カルテで、読影レポートも採血データも全部院内ネットでつながっている電子データで集められてその人のカルテができあがります。だからデータ収集に落ちがない、と思われがちですがそうではない。むしろ逆です。膨大なデータが一瞬にして集まってきて、その情報の重要度なんて何も考慮されないままに並んできますから、主治医の目にとまらないデータは少なくないと思われるのです。昔のように紙データが戻ってきてそのひとつひとつをカルテに糊付けする作業は、「医師の仕事じゃない」「この無駄な時間の浪費が残業を増やす原因だ」と非難されますが、それでも一枚一枚を貼る作業を自分でする方が必ず一度は目を通す(通さざるを得ない)ことになるから、むしろ見落としは減ると思います。電子カルテの最大のネックは、情報量があまりに多過ぎて主治医のアナログな目をすり抜けるデータが少なくない、ということなのであります。 (つづく)

 

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