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何も変わらないことを確認することの大切さ

昨年、甲状腺がんの手術を受けた妻が、時々しみじみと云います。「やっぱり、定期受診って大事なんだよね。15年近く前からある甲状腺のう胞・・・毎年同じように予約して受診して検査して『はい、変わりませんね』と云われて帰ることの繰り返し。仕事を休んで受診した挙げ句に毎回5000円近いお金を払うって、もったいない気がしていつの間にか行かなくなったんだよね」と。「どうせ、変わらないし」ということで5年ほど受診をサボっていたら、新しいところに新しい悪者が生まれていました。そんな話を受診者さんに話すと皆さんが「そう、そうなんですよ。どうせ行っても変わらないしって思うんですよ私も」と相づちを打ちます。

眼底検査で眼底出血があった糖尿病の受診者さんに眼科受診を促すと「いつも行っても何もしてくれないんですよ」と苦笑いしました。「いや、ちゃんと診てくれているはずですよ。何も悪くなっていないことを確認するために受診するのですから」とお答えしました。たしかにそうですね。『何も変わっていないことを確認するために定期的に病院受診する』って、わたしたち医療者は当たり前だと思っていますが、当事者にとっては「そんなもったいないことはできたらしたくない」ですよね。

むかし、友人の兄弟がお父様の勧めでわざわざ遠方から人間ドックを受診しに来たことがあります。フルコースで検査してほぼ問題なかったので「良かったですね」と云ったら、「結局、金をドブに捨てたようなものだったってことですね」と本音とも冗談ともつかない意見を云って帰って行ったことがありました。健診や人間ドックこそ、”健康であることの確認”ですから、正常であることを確認するために金を払うということへの抵抗感がある限り、人間ドックは愚の骨頂なのでありましょうか。

甲状腺がんは概ね静かなものが多いのだとはいえ、今回はたまたま異常所見を見つけられ、「紹介状を書かない限り受診しないから厳しく判定してくれ」とわたしが同僚に云ったから受診したわけですが、「何もなくてもぜひとも毎年定期的に受診して、『何も変わっていなくて良かった』ことを都度都度に喜ぶことが大切」というのが当事者である妻からの切実なメッセージでした。

 

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