高齢者のやせ問題
今回のCareNetの記事はJAGES(Japan Gerontological Evaluation Study:日本老年学的評価研究)のコホートデータを用いた山梨大学の横道 洋司氏らの研究(Journal of Diabetes Investigation誌オンライン版2019年6月17日号)を報じたもので、『わが国の高齢者において、痩せていること(BMI 18.5kg/m2未満)と糖尿病が認知症発症のリスク因子であり、BMIが低いほど認知症発症率が高い』『認知症発症率が最も高かったのは高血圧症を持つ痩せた高齢者で、次いで脂質異常症を持つ痩せた高齢者であった』とのことです。
日本人の高齢者にとって「やせ」はかなり深刻な問題になってきています。いわゆるフレイルとかサルコペニアとかいった負のサイクルだけでなく、認知症にも関与してくる問題だからです。一方で、若い世代のメタボやサルコペニア肥満といった「肥満」の問題が「やせ」の問題に移行するターニングポイントが一律ではなく由々しき問題を引き起こしてもいます。テレビでは「高齢になったらやせないように肉を食え!タンパク質を摂れ!」とやたらと奨励するものだから、結果として糖代謝をおかしくし、内蔵脂肪を増やしてしまったり腎機能を落としてしまったりする、メタボが改善できないまま老年期に突入してこれ幸いにと再び食事制限を止めてしまう輩がいる。その一方でもっと太ってほしいけれど若い頃から食が細くて、無理して食ってもすぐにおなかを壊してしまう虚弱体質の人には、こんなデータを突きつけられてもいかんともしがたい。「食べたくないけど太らないといけないと云われるから薬と思って食べている」という高齢者の中に、今まで正常だった生活習慣病関連のデータが一気に悪化した人のいかに多いことか。
日本人の「やせ」問題が本当に問題なのは、そんなジレンマが根底にあるからなのではないかと感じています。
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