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『特発性冠動脈解離』

中年女性が発症する特発性冠動脈解離の特徴は?
~冠動脈疾患リスクが見当たらないのに起こる心筋梗塞

30〜50代の女性で、高血圧、脂質異常症、動脈硬化などのリスクが見当たらないにもかかわらず、突然、強い胸痛や急性虚血を発症する特発性冠動脈解離(SCAD)という病気、皆さんは知っていましたか。1931年に発表されていたそうですが、不勉強で恐縮ですが、わたしは今回初めて認識しました。閉経前の女性の狭心症や心筋梗塞はれん縮によるものがほとんどで、特に高血圧や糖尿病などの合併症を有しないとなると、わたしが循環器救急の現役だった頃には”若年女性”と云うだけで除外診断をされていた記憶があります。

国立循環器病研究センターを含む国内20施設の2000年から2013年までのAMI患者約2万人を対象とした調査で、SCAD患者は63例で0.31%だったが、50歳以下の女性130例に限ると45例(35%)を占めていたそうです(Int J Cardiol. 2016 Mar 15;207:341-8)し、日本循環器学会がまとめた『急性冠症候群ガイドライン2018年改訂版』では、「CAG で典型的な解離所見を確認できる例は25〜43%であり、55〜70%の症例では明らかな内膜のフラップがなく、びまん性かつ辺縁が滑らかな狭窄所見のみが認められる。非典型例では、CAG 中に冠動脈イメージングを使用することによって冠動脈壁内の偽腔の存在を確認することが、診断の補助となる」とあります。患者の半数に精神的ストレス、2割に身体的ストレスがあるそうで、「ストレスによるカテコラミンの急激な変動が血行力学の急変動を招き、脆弱な血管に負担を与えた可能性も少なくないのではないか」と説明されていました。

もう、救急の臨床現場に戻ることはないでしょうから、SCADという病態を知ったところでその知識を活かせる機会はもうないかもしれませんが、医者としてこんな病態のあることは覚えておきたいと思います。


 

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