『働き方改革』
いつもの定期コラムが発行されました。今日、発行されたものを手にして、「こんなこと書いたっけ?」と思ってしまったわたしって・・・。とりあえず、転載してご紹介します。
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『働き方改革』
最近、24時間営業を謳うスポーツジムが増えてきました。夜遅くまで働いたり不規則な仕事だったりで、なかなか運動の時間が作れない人のニーズに応える形で生まれたのだそうです。「だって、運動は身体に良いのでしょ? 日頃なかなか運動できないから、夜中にジムが開いているのはとても助かります」と、黙々と筋トレに励む若い男性にインタビューしているのを見たことがあります。でも、本当に夜中に運動するのが身体に良いのだろうか。昼行性である人間にとって、夜中は昼間使った交感神経を休ませながら副交感神経が細胞修復や情報整理をする重要な時間のはず。なのに、その時間まで交感神経に働かせたら、単に心身が疲れるだけじゃないのかしら?
テレビでも雑誌でもネットでも健康情報が飛び交っているおかげで、人はあちこちから自分の気に入った情報を仕入れてきて、「これが健康に良いらしい」「これは大して効果がないらしい」などと自分なりの解釈をします。あるいは自分のポリシーに従って(という言い訳で)専門家の言うことに耳を貸さなかったりします。人間をひとつの『会社』と考えるなら、脳が『経営者』で身体は現場の『社員』・・・常にトップの指示に従って現場が動くわけですが、経営者が理不尽な指令を出すことで現場が悲鳴を上げるということはよくある話です。「γGTPは酒のせいだから心配ない」「生活は前と変わってないのだから、今回の悪化は生活習慣のせいではない」「ちょっと糖が出ても夜は腹一杯食わないと眠れないからしょうがない」「ストレスだらけだから肺気腫くらいでタバコはやめられない」・・・せっかく現場の悲鳴を検査データに託したというのに、トップはあえて社員の訴えに無視を決め込むようです。
私は若い頃からスジの通らないことはどんな上司にでも食ってかかっていましたが、世間の優秀な社員さんたちは、たとえトップの突然のご乱心に困り果てたとしても楯突くことなく、何とか自力で解決させようと努力します。それこそが優秀な社員の証なのでしょうが、そういう人が「もう処理能力の限界です」と訴えながら燃え尽きる。『健康経営』という言葉を耳にしますが、健康経営の基本は、経営者が現場をきちんと把握していることです。たとえ脳が「身体に良い」と信じていても、身体がノーと言うなら、なぜ自分の身体ではノーなのかを考えなければなりません。真面目に働く身体から出るシグナルは最後の警告です。脳がそこで何らかの対策を施してあげなければ手遅れになります。
周りに対してはどれだけ嘯(うそぶ)いてもいいから、自分の身体だけは大事に考えてあげてほしい。国の施策の『働き方改革』は形だけのものになりそうですが、こんな時こそ自分と会話して、自分の体内の『働き方改革』を実のあるものにしてほしいと願います。
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