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やはり、医療は信頼関係

家庭医への共感で2型糖尿病死亡リスク半減

”"共感"が治療の有効性に影響を与える具体例が示された。2型糖尿病患者は、診断から1年以内に共感度が高い家庭医を受診することにより、その後の10年間に死亡するリスクが半減する可能性があることが、英国の地域住民ベースの前向きコホート研究で報告された。英・University of CambridgeのHajira Dambba-Miller氏らがAnn Fam Med(2019; 17: 311-318)で発表した。"(Medical tribune 2019.8.22配信)

2型糖尿病と診断後1年間の家庭医への共感の経験と、その後10年間の心血管イベントや全死因死亡発生率との関連を検討したイギリスの報告ですが、家庭医に対する共感度が高かった方が臨床的に良好な経過をたどるということがわかったという。もちろん、とても優秀な医者だから治療がうまくいってその結果信頼できた可能性もあるのでしょうが、そういうことを踏まえた上で今回の結論が導き出されているはずです。どれだけ世界的に有名でとても権威のある医者でもウマが合わないとか上から目線の横柄な態度をとられていつも受診時には萎縮してしまう相手より、世間では藪医者呼ばわりされていても自分の訴えにはいつも耳を貸して共感してくれる医者の方が、主治医としてははるかにすばらしいし、そういう医者に巡り会えた患者さんは幸せ者だと心から思います。当たり前のことが辛抱強い追跡でやっと評価されて本当にうれしいです。そう。医学は科学かもしれないけれど、医療は単純な科学や数学の論理ではない、と結論つけたい。

「医学は学問であり科学であるから、そんなヒューマニズムのような定量できないものは意味がない」とか、「そんな科学的でないことを云っているから医学は科学ではないとか揶揄されるのだ」とか批判する人がおり、一方で「検査の結果の真実はひとつなのだから、あてにならない人間の評価よりAIなどの機械の客観的な評価の方がはるかに信用できる」という患者さんも増えてきました。人間関係の重要性を感じて医者の道を選んだわたしにとってはとても悲しい時代になったなと感じていたので、今回のような報告が医療雑誌に発表されたことはとてもうれしく思います。

PS) consultation and relational empathy(CARE):家庭医により①安心感が得られた②自分の話を引き出してもらえた③真剣に話を聞いてもらえた➃1人の人間として認め、関心を持ってくれた⑤不安を十分理解してくれた-などの10項目から成る。なお、CAREのスコアは高いほど共感度が高いとされる。
 

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