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左側に傾いていく

先日人間ドックを受診されたご高齢の女性。ご家族と一緒に受診されたので意思の疎通が難しいのかと思ったら、とてもインテリジェンスが高く耳もしっかりしていてしっかりと受け答えされました。彼女(およびその家族)の主訴は、『頻回の転倒』・・・一度足を引っかけて転倒して以降、すぐに何度も転倒するようになった。脳外科医でCT検査など受けたけれど問題がなく、「歳のせいだ」と云われるのが納得いかないから脳ドックを受けに来た、というものでした。なんか立って歩くと左側に引っ張られていく感じがしてふらつくのだそうです。耳鼻咽喉科で平衡感覚の検査や起立検査など受けてみたけれど「耳鼻科的には問題ない」と云われたとか。でも、何か原因があるはずだ!と思うのだそうです。

うちで行った脳MRI検査でもMRA検査でも年齢相応の萎縮や動脈硬化所見以外は目立った所見は見当たりませんでした。とりあえず、人間ドックのようなサラッと浅く広く流すような検査では何もわからないので、脳神経内科などを受診してもっと事細かに神経学的診察などを受けた上で説明を受けた方が建設的だと説明しました。

ただ、雰囲気的にはどの科に行って検査しても異常は見つからないような気がしました。この歳で一回強い転倒をしてしまうとその時に身体全体が軋んでしまいます。それが、若いときのようには元に戻らなくなるものです。もしも、進んだ医療の現場で徹底的に原因探しをしてみても原因が見つからなかったら、原因究明にあまり固執せず、今の症状がどうやったら軽くなるか(消えたらもっとよい)と云うことを教わった方が前向きに生きていけると思うのです。そういうことをしてくれるのは理学療法士さんの仕事です。医者は自分の専門領域に原因が見当たらなければ「何もない」と云うだけです。もっと身体全体のトータルコーディネートを考えてくれる人にアドバイスをもらう方が良いように思いました。

原因究明を求めて人間ドックを受けて、高い金を払った挙げ句に「大した問題はない」「症状の原因になりそうな異常は見当たらない」と云われた受診者さん(とご家族)が落胆した表情で部屋を出て行く・・・何の問題もなかったことを喜べない空気の中で、とても、申し訳ない気持ちになりました。

 

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