「『感謝』の真意」
定期的に書いている機関誌のコラムが発行されました。
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「『感謝』の真意」
「感謝する」ということは、相手をリスペクト(尊敬)することだと思います。何に対しても感謝できる人は心も身体も安定しているわけで、心身の健康や予防医療の観点からもとても重要ですし、最近よく耳にする『アンガーマネージメント(怒りの制御)』にもつながります。若い頃にすぐにカッとして周りを攻撃していた私は、いろいろな人から「感謝する」ことの大切さを教えられてきました。でも頭では理解してもそれをきちんと身につけるのは容易ではありません。「感謝する」は理屈ではないからです。
「頭を撫でてやった」「頭を撫でさせてもらった」
「手を握ってやった」「手を握らせてもらった」
同じ行為なのに、相手に対する自分の心の有り様を言葉にするとまったく違うものになります。上から目線・下から目線、格上・格下という区別が無意識になされるので、選んだ表現によって相手をどう捉えているかという本心がわかります。「してやっている」と思っていたわが子は成長とともにいつの間にか「してもらう」立場になっているはずなのに、いつまでもわが子を“自分の持ち物”と思っている人が少なくありません。愛犬にはどうでしょう。「頭を撫でさせてもらった」「お腹をさすらせてもらった」・・・しっぽを大きく振ってキラキラした目で慕ってくる愛犬に向かって、自分はそんな気持ちを持つことができているだろうか。愛犬は私が癒やしてあげているのではなく、いつでも私が癒やしてもらっているはずなのに・・・。
先日、フェイスブックの記事を眺めていて、ある人の文章が目にとまりました。「社会で生きていく上で一番大切なのは『感謝』の気持ちだ」という話。「上司が部下に仕事を頼んだ時、そこに『感謝』の気持ちがないと必ずアラ探しやダメ出しをする。『感謝』で満たされた人は決してそんなことはしない。組織が成長できるのは、『感謝』することのできる人が多く集まった時だ」という内容でした。自分の人生に関係する人のすべての行動が今の自分を形作る上で重要な役割を担っています。「感謝」は形(理屈)でするものではなく心でするもの。昔は意識して「ありがとう」と言っていたのに今は無意識に「ありがとう」と言えるようになった。周りが自分の依頼したことをきちんとやってくれ、相談したことに応えてくれたからこそ今の自分がある、と思える。他人に仕事を任せられるということは、自分が大人になった印。他人を信じられるということは、他人の行動のひとつひとつに感謝できているという証・・・10年前には絶対思わなかったそんなことを実感として捉えられるようになった自分を、「少しは成長したかな」とこっそり褒めている次第です。
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