老衰死
厚労省が発表した人口動態統計では、2018年の死因で「老衰」が脳血管疾患を抜いて第3位となりました(1位、2位は悪性新生物(がん)と心血管疾患です)。これはとても意外でした。そもそも、死因に「老衰」ってあるのか? わたしが臨床医だった頃、死亡診断書を書く機会はたくさんあったけれど、病院で看取った人は当然すべてが病死なわけで、第1死因に「老衰」と書く経験自体がありません。死亡診断書(死体検案書)記入マニュアルによると、「死因としての『老衰』は、高齢者で他に記載すべき死亡の原因がない、いわゆる自然死の場合のみ用いる」と書かれているのだそうです。そう考えると、がん死と突然死以外は結局全部『老衰死』とも云えるのかもしれないけれど、介護施設での死や在宅医療の現場での死に対して、自然死=老衰死の人が増えていくのは当然なこと。むしろそれが文字通り”人間の自然のままの最期”なのだと考えれば一番健康で幸せな死なのだろうと思います。
ただ、健康に動き回っている世代(わたしたちのような)は老化が怖いし、それにいかに抗って生きるかばかり考えています。あるべき機能が日に日に衰え、ある日突然消えてしまったりするなんて、若い頃には考えてもみなかったこと。あ、いや、医者としてちゃんと知っていて、それは当たり前の自然な成り行きだと理解していたけれど、それが他人事だから理解できたのであって、自分のことになったらそうはいかないものです。そんな時期を通り過ぎて、人生の全う感に包まれて静かに達観できたときに「老衰死」というのが待っているのかもしれません。
わたしは、そんな感情になるときまで元気に生きていられるのかしら。
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