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人生を変えてしまうかもしれないこと

先日、熊本の病院で大変な事件が起きました。

市内の基幹病院である公的医療機関の入院患者から新型コロナウイルス感染者が出たと報道されました。病院内も世間も大騒動です。その患者さんは最初から個室に入院し、入院後2週間以上してから突然に発熱し、検査で肺炎が疑われて検体検査をしたら新型コロナ陽性反応が出たために、指定医療機関に転院しました(熊本市ホームページの報道の通り)。

その後、当該病院は病院機能をすべてストップさせて、濃厚接触者だけでなく関わった可能性のある職員190人のPCR検査を迅速に行いましたが、すべてが陰性でした。「すばらしい。よかった、よかった」で終わるはずだったけれど、何かがおかしい。患者さんは2週間以上個室から出ていないし面会家族は限られている(PCR陰性)のに、感染源が特定できないのはなぜ? そう考えた関係者が、念のためにすべての行程を再確認した結果、実は「当該患者さんのPCR検査はもともと陰性だった」ということがわかったのです。検査センターの担当者の検体番号入力ミス・・・それだけの単純なミスでこの大騒ぎになりました(前出ホームページから)。

とても恐ろしいことです。濡れ衣を着せられた当該病院のスタッフの中には配偶者の出勤停止指示やお子さんの保育園登園停止依頼を受けた人がおられると聞きます。病院の信頼も丸つぶれでしょう(こういう訂正報道は最初の発覚報道ほどは浸透しないものです)。でも、一番かわいそうなのは当該患者さんです。感染してもいないのに感染者しかいない感染病棟に隔離されたのだけれど、今度は簡単に一般病棟に退室できるのかしら。いや、そんなことよりももっと怖いことは、もし190人のスタッフの中にPCR陽性者が一人でも出ていたら・・・その人が感染源ではないかと疑われるだけではなく、結果を見直しされることもなく当該患者さんはずっと感染者のレッテルを貼られながら生きていくことになったはずだということです。新型コロナに感染したかどうか(もちろんこれから遅かれ早かれ多くの人が感染するだろうと云われていますが)、それは社会的にも精神的にもものすごいストレスです。周りからバイ菌扱いされ、自分は急に重症化して命を落とすのではないかという不安感に苛まれるのです。そんな全く逆の人生をたどるかもしれないことがちょっとした記載ミスで起きた。ということは、発覚していなかったけれどこれまでにも起きていたことかもしれないし、こんな数件しか扱わない地方都市でそんなもんなら、大都市の大量検体を扱うところではちょこちょこ起こっているのではないか?という疑心暗鬼に繋がりかねません。

とりあえず、濡れ衣が晴れた当該病院関係者と当該患者さんは、”えん罪”に発展せずに良かったです。日頃の標準予防策が徹底されている証でしょう。たまたまPCR検査を受けさせられた190人のスタッフの全員が陰性だったということは、考えてみればものすごいことです。何もない一般市民グループをたまたま200人弱選んでサンプリングした様なもの(医療機関に勤務している分だけ、一般市民よりリスクは高い)です。仕事だけではなく、ここ2週間のプライベートな日常生活をすべてさらけ出したようなものです。その中に陽性者が一人もいなかったのです。これは熊本市民としても誇るべきものなのかもしれません。

一方で、本当は陽性なのに陰性にされた人。すでに感染して入院していた人らしいですが、「やっと陰性になった」と一旦は喜んだのではないかと思うと、切ないです。早くこの新型コロナの渦が消えていってほしいと心から祈ります。

 

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