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あたふた

GWのある日の朝のことでした。いつものように朝から仏壇の水を替えてから、ろうそくに火をつけて線香を小さく折ってろうそくにかざして火を移して・・・粛々と作法をこなしていた時に、小さく折った線香の1本が香炉の灰の中に落ち込みました。

どうということもない小さな出来事でしたが、その1本が頭から灰の中に落ち込んだことから騒動(わたしの中でだけの騒動ですが)が始まりました。香炉の中の灰は底なし。その小さな1本を取り上げようと思うけれどなかなか取れない。使っていない長い線香で引っかけようとするけれど何かすればするほど沈んでいく。しかも気づけば無傷だった他の線香にまで灰がかぶってきて数本は頭が灰に埋もれかけている。あれあれあれ、と独りであたふたと慌てる自分にちょっと苛つきながら、「もう、いいや」と開き直って人差し指と親指を灰の中にツッコんで真っ白になった線香を救済。消えていた火をもう一度つけ直しました。一件落着。でも、香炉の周りは悲惨な状況。残りの線香はあちこちの方向に散らかり、かぶった灰は香炉の縁からリンや机の上にまで広がり、拭き取ろうとしたら一層汚れていく始末。「一体何が起きたの?」と云わんばかりの惨状になってしまいました。お参りできる状況ではなかったけれど火が点いているからそのまま手を合わせましたが・・・「こんなはずじゃなかたのに」「何やってるんだか」・・・独りで無性に情けなくなりました。

結局、最初の1本以外は、灰の中に埋もれはしたもののちゃんと最後まで点いていましたし、周りを掃除したら何事もなかったかのようになりました。それとともに、ココロは冷静になりました。よく考えたら大したことは何も起きていない。独りで慌てて、独りで「とんでもないことを起こしてしまった」と冷静さを失ってしまった。最初のあの1本を深追いさえしなければ、小さな1本が燃えることなく残ったというだけのことだったのに、どうしてあんなに深追いして意地になったんだろう。あんなこと、今までにも何度もあったことなのに・・・。

同じようなこと、人生にはたくさんありましたね。その場では、「取り返しの付かないことをした」「恥ずかしくてもう誰とも会えない」「もうオレは終わりかもしれない」・・・そんなに深刻に落ち込んだのに、後で考えたらどうということもなく、周りに誰も気づいた人すらいないのが現実だったみたいなこと。「神様、またひとつ勉強させていただきました」・・・もう一度きちんと手を合わせることで、今回のことは忘れることにいたします。

 

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