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2020年8月

メイキング新しいコラム

明日締め切りのコラムの原稿書きがやっと終わり、無事に担当者に送ることができました。どうも最近、遅筆に拍車がかかっています。おかげで、こっちのブログ書きは1週間お留守。書き込みのためのページを開けもしないうちに8月が終わります。

今度のコラムは最初から『新しい生活様式』という題名にすることに決めていました。年4回発行なので今回コロナ関連を書かないとタイミングを逸すると考えたからです。内容は漠然と考えてはいたけれど最後まで的を絞りきれずに締め切りが近づき・・・一応は脱稿したけれど、当初の想像していた内容とはすっかりかけ離れてしまいました。最初は、「コロナ太り」だの「コロナやせ」だのと自嘲気味に叫びながら、生活リズムが変わったことに付いて行けずに自分のカラダが変貌してしまったことへの言い訳をいつまでもしていると、カラダもココロも元に戻らなくなるぞ!ということを書こうと思っていたのになぁ(最終的にどんな内容になったのかは、発行されてからここに転記しますからそれまでお待ちを)。

文章としてはまあまあいい感じにまとまったとは思うのだけど・・・最近、よほど書く前にイメージを固めておかないといつもこんな感じの終着点になってしまうんですよね。まあ、学術論文だとか公文書だとかいうものではないから、これでいいと云えばいいのですが・・・なんか、不本意です。

 

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人間ドック7時間滞在

先日、首相が大学病院の日帰りドックで7時間も滞在した、と話題になっていました。「人間ドックごときでそんな長時間かかるのはおかしい。何か特殊な精密検査をこっそり受けているのではないか」という憶測が流れたようで、マスコミが大騒動してました。

大物政治家の裏事情は決して表には出てこないモノだから真相は存じませんが、人間ドックに従事する一医師として一応お書きしておきますけど、日帰り人間ドックでも全大腸内視鏡検査を受けるなら、普通にこの程度の時間はかかります。結果説明まできちんと聞くならもっとかかるかもしれません。特診なのでしょうから、最優先で最低限の時間で検査をしてしまおうと思えばできないことはないかもしれませんが、休養も含めて普通に進めればそんなものです。持病があるので必ず全大腸内視鏡検査は受けるでしょう。腸洗浄剤で大腸内の便をすべて出してしまうまでは検査ができないのですから、腹部超音波検査やレントゲンCT検査などを終えた後に洗浄剤を飲み始めること、人によっては通常の量の洗浄剤では合格が出ないこともあること、大腸検査の後には約1時間ほどは休養するであろうこと・・・いや、首相のスケジュールを擁護したくて書いているのではなく、普通に人間ドックを受けようと思っている方に、「全大腸内視鏡検査を受けるならドックは1日がかりだから、その覚悟で来てください」と伝えたかっただけです。

そもそも、『人間ドック』というのは、大物政治家が俗世から離れて(マスコミや野党の追及を逃れる意味も含めて)、大型の船がゆっくり点検を受ける船のドックのように、ゆっくり1週間くらい時間をかけて身体全身をくまなくチェックする、という意味でできたコトバです。いつの間にか、無駄な時間を省いて検査を詰め込めるならさっさと終わらせてほしい、という単なる『総合検査』の意味合いになってしまってますけれど、そうじゃないんですよ、とも云っておきたいと思います。

 

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ビールが認知症を予防する?

ビールのホップの苦味成分が認知機能を改善

”ビールの苦味成分である「熟成ホップ由来苦味酸」に、認知機能やストレス状態を改善する作用があることを、順天堂大学とキリンの研究グループが臨床試験で明らかにした。食生活を通じた新しい認知症の予防方法を開発できる可能性がある。”

 ”ホップの酸化熟成により生成する「熟成ホップ由来苦味酸」は、ビールの苦味成分として知られている。これまでの研究で、このホップ苦味酸には、「脳腸相関」を活性化して、脳内炎症を抑制し、アルツハイマー病を予防する効果があることが示されている。”

 ”ホップ苦味酸を継続して摂取すると、中高年者の認知機能の中で、とくに注意機能、ストレス状態や気分状態が改善することが明らかになった。”

先日、「禁煙しようかと思ったけど、たばこを吸わない人より吸ってる人の方がコロナが重症化しないらしいから、コロナが落ち着くまでは禁煙はしない」と問診で云っていた受診者がいました。聞いていた保健師さんは呆れていましたが、わたしはちゃんとそのデータ知っていましたから、結果説明をしながら「たばこを吸うことでコロナは重症化しないかもしれないけど、冠動脈にこれだけ高度の石灰化があるから心筋梗塞になりますよ。その時に、救急車を受け入れてくれる病院がなくなるかもしれないから、吸うなら吸うでそれなりの覚悟を持って吸ってくださいね」と云ったら、苦笑いしてました(笑)

そんな人のことをふと思い出させてくれたのが、このビールの記事でした。「ホップの苦み成分が認知症予防にいい」というデータなのに、わたしの様な酒飲みはこれを「認知症予防のためにはビールを一杯飲んだらいいんやな」と勘違いしてほくそ笑む。「ホップは苦い方がいいんだから、アサヒスーパードライよりわたしの大好きなキリンラガーの方がいいんやな」「最近コトバが直ぐ出なくなってきているから、もう一缶多めに飲むようにしようかな」と、勝手にどんどん解釈を進めるわけです。え、この記事読んでそんなこと考えるのは、わたしだけですか? 

間違えてはなりません。ビールが認知症を予防するのではありません。ビールのホップの”苦み成分”が予防する可能性があるのです。え、そんなこと分かっとるわ!って? それは、大変失礼しました。

 

 

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快眠

快眠ジャパン

現代社会で、睡眠の悩みを抱えている人は老若男女にかかわらずとても多いと聞きます。しかも、今や糖尿病や高血圧症などの生活習慣病だけでなく、認知症やがんに至るまで、すべて『睡眠』で語られる時代です。朝起きて朝日を浴びるときから睡眠周期が始まって、”メラトニン”とか”視床下部”とか”体内時計”とか、ここでも再三書いてきました。仕事中にも人間ドック受診者の皆さんにいつも蘊蓄(うんちく)を語っているわたしです。

でも、実は、わたしの睡眠は決してよろしくないのだと自覚しています。酒を飲んでうたた寝してしまうことは多いし、寝ていても1.5~2時間おきに小便に起きるし、昼前に異常に眠くなることがあるし、結果として睡眠時間が4時間だったりする。でも、だから何が悪いの? で、何をしたらいいの?となったときに、わかるようで説明できない、というのが『睡眠』。奥が深いのです。

ということで、先日、こんなホームページが紹介されてきました。製薬会社が作ったホームページですが、一般の方々が『睡眠』について簡単に理解するのにはわかりやすいと思いますで、ご紹介します。わたしたち医師は常識だと思っている(知っている)ことでも皆さんが誤解していることはたくさんあります。一昔前までは常識だったこと(たとえば、「眠くなくても毎日決まった時刻に床につくのが良い」など)で本当は間違いだったということもたくさん。だから、ぜひ、一度見てみてください。

快眠ジャパン

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片付け好きの人は。

ご存じの方も多いですが、わたしは片付けるのが好き。自分でもスイーパーな性格を自慢にしています。そして、妻は片付けが苦手。”片付け下手”なのではありません。職場などでは、周りが一目置くほどの整理整頓ができる人(らしい)です。家の中では、片付けられません。使ったモノはそのまま(またそのうち使うからなのだそうで)、郵便物やレシートや宅配の貼ってきた箱やがいつの間にか積み上げられていきます。そんな食卓に雑然と積み上げられたコザコザを週末に整理するのはわたし・・・ほら、片付けるのが三度の飯より好きな男だから。要らないモノを捨てて、前あったところに戻したりあるべき位置に戻してしまえば、数分できれいに片付いてしまいます。

片付けられない人は、「元あった場所に戻す」という行動が面倒くさかったり、要らない紙くずを屑箱に入れに行くのが億劫だったりするのだ、とある掃除好きな友人が妻に云っていましたが、わたしは別の理由があると思っています。おそらく、幼少の頃に『片付ける』という行為に対して褒められた経験があまりないのではないかと。いつも「ちゃんと片付けなさい!」と親に叱られて渋々片付けをする子だったのでは? だから、しなければならない(すべきである)という現場ではきちんとすることができる(周りからも褒められるし)のだと思います。わたしは、物心ついた頃から「すごいね、こんな小さいのにちゃんと片付けられるんだね」と周りに褒められながら育ちました。たしか、とても小さな頃は我が家の茶の間の棚はモノであふれていた記憶があります。雑然と投げ捨てるようにモノがあって、何かを探す度に全部をひっくり返す有様で、そのままになるからさらに雑然となって・・・多分、母も姉も片付けは得意ではなかったから、その結果そうなんていたのではないかと想像します。それをある日一念発起してきれいに片付けたのはわたし。その爽快感が忘れられないということ以上に、そのことを褒められて「えらいね」と云われたことが片付け好きになるきっかけだったのではないかと、今になって思うのです。

掃除や整理整頓は躾。きれいにできるかどうかのセンスには性格や器用さも影響する。でも、大人になって、誰もみていなくても自分なりにきちんと整理整頓したくなるのは、子どもの頃の大人のコトバ=褒め言葉のおかげと云っても過言ではないと思います。

 

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嗅覚異常って

新型コロナウイルス感染症の症状で、『味覚異常』とか『嗅覚異常』とかありますが、あれは具体的にはどういう症状なのでしょうか。『味覚異常』は”食べたモノの味が全く分からなくなる”ということだと聞いたことがありますが、『嗅覚異常』も”臭いがしない”という定義でいいのでしょうか。

実は最近になって時々わたしの鼻の周りで異臭がするのです。洗面所で手を洗っていると、急にイヌの臭い(いわゆる獣臭)がしてきたり汗臭いにおい(柔道部の部室の中のような)がしてきたり・・・辺りを見回しても愛犬が近くにいる風でもないし、汗汚れしたタオルがあるわけでもないのに、です。そしてその臭いは、ふっとウソのように消えてしまう。毎日マスクをしているから鼻の奥に強烈な臭いの記憶がへばりついているのかなとか科学的でないことを思ったりしていたら、「それがいわゆる『嗅覚異常』ってやつの一つなんじゃないの?わたしも何となく体調が悪かったり異常にだるかったりするし、夫婦でこっそりコロナに感染していたりするかも・・・」なんて物騒なことを妻が呟く。

お互いに、不安で疑心暗鬼なのでありますが、逆に、こんな不定愁訴のまま何事もなく嵐が通り過ぎて気づいたらいつの間にか抗体ができていた、なんてことになったらラッキーなんだけどな~と暗に姑息なことを目論んでいる夫婦なのであります(笑)

 

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面倒くさい

「たぶん、この子がいなくなったらわたしは散歩なんかしなくなると思う」

日課の愛犬の散歩を一緒にしながら、妻がそう呟きました。それでなくても、散歩の間中わたしに引き綱を任せてずっとスマホを弄っている妻だけど、『イヌの散歩』の口実で何とか外に出ているわけで、それがなくなれば出て歩く理由がないので歩かないだろうというのです。「えー。そのときはボクと二人だけで散歩すればいいやん」と云ってみたけれど、「イヤよ、面倒くさいモン」と即答されてしまいました(笑)

わたしが出張や外泊するときには、食事の準備をすることすら面倒だから作らないという妻。基本、料理好きで彼女の作る料理はどれもとてもおいしいのだけれど、これも他人に作ってあげて他人がそれを喜んでくれるから作るのだ、と明確な切り分けができている様です。「いちいち自分だけのために手の込んだ料理を作るのは面倒だ」と。

「食事作りも運動も、しなければならない理由があるからするけれど、しないで済むなら何もしたくない」というのは、決して堕落した考え方なのではなく、正直に突き詰めてみたら多くの人たちの本心なのではないかと思います。ただ、そうしていると朽ち果てていくことを知っているからやむを得ずやっているだけ。わたしたち夫婦、どちらか一方が逝ってしまったら(とくにわたしが先に逝ってしまったら)、と思うとちょっと恐ろしくなりますが、それもまたやむなしなのかもしれません。

 

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弁膜症治療への想い

わたしの叔母が今度心臓手術を受けることになりました。すでに80歳を優に超えた年齢です。わたしが臨床現場で働いていた時代なら手術対象外になっていた年齢ですが、今や開胸しなくても弁手術ができる時代になりました。

彼女が手術を受けるに当たって、すったもんだありました。数年前に心不全になって以降、地域の基幹病院の循環器内科専門医が診療を受け持っていましたが、割と落ち着いた状態が続いたために本人もそんなに重症だとは感じていなかった様です。たまたま昨年末のあいさつに立ち寄った時に尋常ではない叔母の姿(少し動いてもふーふーいう)に驚いたのですが、それでも本人は気にせず動き回ろうとしていました。少しでも体を鍛えようとばかり、息切れしながらも毎日の散歩とリハビリを欠かさない叔母。それでなくても若い頃から年がら年中動き回って働いていた人でしたから、これくらいは動いたうちに入らないと思っていたのかもしれません。

でも、今回、主治医から心臓手術の提案がなされて、本人だけでなく娘たちも悩みました。「この歳になって寝たきりになって娘に迷惑をかけたくないから、手術は嫌だ」という本人。「どうもないのだったら、そんな手術受ける必要はないと思うのになぜ勧めるの?」と疑心暗鬼の娘。基本的に、「心臓手術」=大手術=「寝たきりになる」という印象を拭い去れない様子でした。でも、この歳になって心臓手術(TAVI)を勧める理由は、命を長らえさせるためではありません。もっと元気に動き回れる身体に戻すためです。だから、これから徐々に衰えていって寝たきりになっても構わないというのなら今のままでいいかもしれないけれど、「もっと元気に長生きしたい(させたい)」と思うのなら前向きに手術を受けることを検討してもいいのではないか?という提言をしました。その結果として、今回TAVIを受けることになったのですが・・・良い結果になることを切に願います。

ところで、「寝たきりになりたくない」と思って、無理して散歩を続けていた叔母。そういう思いの人は実は少なくないのではないかと思います。骨格筋は動かないとどんどん退化するから・・・でも、心臓弁膜症は鍛えて改善させる病気ではありません。この場合は、心臓としてはじっと動かないで寝ているのがベストなのです。このジレンマ、心臓リハビリとしてだれか専門家が指導しないと難しすぎると感じました。

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お母さんの嗜好の勝負

日本食多く摂ると死亡リスク低下

 ”東北大学大学院公衆衛生学分野の松山紗奈江氏らは、日本人の生活習慣病予防や健康寿命の延伸を目的に実施している大規模コホート研究JPHC Studyの調査結果を基に、日本食の摂取と死亡との関連を検討。その結果、日本食の高摂取により全死亡、循環器疾患死、心疾患死の各リスク低下が示唆されたと、Eur J Nutr(2020年7月16日オンライン版)に発表した。”(Medical Tribune 2020年08月10日配信号掲載)

日本食、特に海草、漬物、緑黄色野菜、魚介類、緑茶の摂取量が多いほど死亡率が低いのは、健康に有益な栄養素(食物繊維、抗酸化物質、カロテノイド、イコサペント酸エチルなど)の摂取量が多いからだ、という至極当然な結果を導き出していただきました。

で、どうする? 私たち世代は良いとして、問題は今の若者世代がどうやったら日本食に目を向けるようになるのかということでしょう。何しろ、今の若者世代のお母さん世代・お父さん世代が日本食嗜好ではないことに一番のネックがあるわけで、その理由はおそらくその親の世代、すなはち私たち世代が、子どもの頃の貧相な日本食ではなく文化的な西洋の食事にあこがれ、中流家庭の象徴は夕餉の食卓に贅沢な洋食のおかずが並ぶことだと信じて止まなかったことに起因しているように思うわけです。今の若者世代が、このコッテリ高カロリー食にうんざりして、「やはり日本食が一番ヘルシーでおいしい!」とばかりに嗜好を変えることができれば、将来が明るいのですが・・・何しろ西洋の食べ物に舌が慣れているから、「ヘルシー」「ダイエット」と叫んでいてもふと気づけば手にはインスタ映えするスイーツを持っているわけで、”日本食へのあこがれ”にはまだまだほど遠い。

これからの世界を引っ張るであろう若い栄養士さんや料理人の方々の、より一層の奮闘を願っております。

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何でもコロナ

先日の夕方、仕事から帰って涼しくなるのを待ってから日課の愛犬の散歩に行きまして、小一時間の散歩の後の夕食までの間に妙に倦怠感が強くなるのを自覚しました。なんだか変だけど、特に他に症状がない。喉が渇くわけでもないし、食欲がないわけでもない。汗や冷汗が出るでもない。散歩前にお菓子を食ったから低血糖でもないだろう。

なんだか得体の知れない不安感の中、やはり最初に頭をよぎるのは”新型コロナ”。そういえば、患者の初発症状に『尋常じゃない倦怠感』ってよく聞く。もしやあれがこの感覚なのか? 不安になってそっと体温を測ってみる。36.3℃、平熱というよりむしろ低いくらいだ。でもとにかくだるい。夕食を摂ってもあまり大きな変化がない。もう一度体温を測ってみる。変わらない。結局知らない間に500mlペットボトル3本のお茶を飲み干し、クーラーの元で涼んでいたら徐々に回復しました。翌朝には何事もなかったかの様。体温は36.0℃・・・一安心? でもたしか、「その数日後に急に高熱が出て調べたらコロナだった」って例をいくつも見てきたから、まだどうなるか分からないという不安。

よく考えてみたら、真夏の体温以上の気温の中で1時間も歩けば普通に脱水や熱中症になってもおかしくない。普通だったら、むしろそれを先に考えるもの・・・なのに、今はまずコロナの除外が必須になる。鼻水が出れば夏かぜで、お腹を壊せば急性腸炎か食中毒か・・・なのに今年はそんなものまでまず「コロナではないか?」と考えなければなりません。年齢とともに不定愁訴は増える一方ですが、そのすべてが「コロナではないか?」となると、そしてそれが「平熱の体温であっても安心はできない」となると、何もかもが疑心暗鬼・・・それだけで頭がどうかなりそうだ。

 

 

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新型コロナの後遺症

COVID-19治癒後、8割に心臓MRIで異常所見

Care Netの2020.8.11配信号で紹介されたドイツからの研究報告は、かなりショッキングな内容でした。

最近COVID-19が治癒した100例におけるコホート研究で、心臓MRI(CMR)により78%に心臓病併発、60%に進行中の心筋炎症が認められたことを、ドイツ・フランクフルト大学病院のValentina O. Puntmann氏らが報告した。また、これらは既往歴、COVID-19の重症度や全体的な経過、診断からの期間とは関連がなかったという。JAMA Cardiology誌オンライン版2020年7月27日号に掲載

2020年4~6月にフランクフルト大学病院COVID-19レジストリにおいて、COVID-19が最近治癒した100例を対象とした前向き観察コホート研究によると、心筋傷害が存在することを示す高感度トロポニンT(hsTnT)が71例(71%)で検出され、対照群に比べると明らかに左室駆出率が低く、左室容積および左室心筋重量も大きくなっていたそうです。MRI検査による心筋炎所見も多くに認められていました。

ドイツの結果ということはいわゆる”ヨーロッパ由来”のCOVID-19がメインで、これは強烈な破壊力を持つウイルスだから心筋炎を併発してもおかしくないとは思いますが、病気が治癒したとされている人の大多数にまだ心臓傷害が残っていたこと、そもそも感染時の症状の程度や転帰の重症度に関連がないことに驚かされます。かなり敏感な検査ではあるので臨床症状が落ち着いてからこれらが落ち着くまでにはかなりのタイムラグがあって然るべしとは思いますが、もしや治癒後の全身状態がなかなかよくならない人が多い理由はこんなことにも一因があるのかもしれません。


 

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タンパク質は腎機能を悪化させない?

「蛋白質摂取=腎機能低下」は常識でも誤謬かも』(Medical Tribune "Doctor's Eye" 山田悟 2020.8.7配信号)

「タンパク質は腎機能を悪化させる」という概念はこれまでの常識でしたが、明確な科学的根拠に乏しいために、最近の諸学会(特に糖尿病学会)ではガイドラインからタンパク質制限の推奨を除外する動きになっているというのです。一方で日本腎臓学会はいまだに「腎臓病進行を抑制するためにタンパク質摂取量制限を推奨すべき」としています。

とにかくわたしたち予防医療に携わる医療者の立場としては、CKD(慢性腎臓病)の診断をつけられた受診者にどのような食事指導をするのかが一番悩ましい点です。腎機能は年齢とともに低下するものであり、高齢者ほどタンパク質摂取が重要になるためのジレンマは以前にもここで紹介しました。コレステロール治療の要否論争以上にこのタンパク制限要否はわたしたちを悩ませる項目であり、早く明確な方向付けがほしいところです。

そんな中で山田先生が紹介したオーストラリアの研究報告はカルシウム摂取骨折予後研究のサブグループ解析なのですが、これによると、「植物性タンパク質摂取が多いほどeGFRの低下速度が緩徐になり、動物性タンパク質摂取では有意な関連が見られなかった」、つまり、「植物性タンパク質は腎機能低下に保護的に作用し,動物性タンパク質は保護にも悪化にも作用しない」ということになり、「蛋白質制限食よりも摂取蛋白質を植物性にするという治療選択肢を患者に提示する患者中心アプローチを考慮すべきだと結論している」というわけです。

ま、これはこれで説得力はあるので、説明の時に活かしてみたいと思います。要するに、「年取ったら肉食え」は必ずしも正しくはないぞ、ということですよね。

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カタカナ

日本語は、平仮名より片仮名の方が先に普及したモノ? たしか、漢字を理解しやすくするために漢字の一部を使ってカタカナ(片仮名)が生まれ、漢字を崩し文字にしてひらがな(平仮名)が生まれたのが平安時代だったこと、平仮名はおんな文字だったこと・・・それくらいの知識しかありません。

先日、NHKの番組『ネーミングバラエティー 日本人のおなまえっ!』の【妖怪のおなまえ】の回で、面白いお話を知りました。

コロナ禍で有名になった『アマビエ』さま。江戸時代の肥後国に「病気が流行したら自分の姿を写して人々に見せるように」と伝えて海中に消えたという云い伝えの妖怪で、いつの間にか日本中で今年一番有名になった妖怪です。わたしは、このアマビエさまの人形を作る国東の作家さんのことでいち早く知っていたので、アマビエさまの話題はちょっと肩入れしていたのですが、この番組でとてもショッキングな事実を知りました。実はこの妖怪の本当の名前は『アマビエ』ではなく『アマビコ』だったというのです。片仮名の『コ』を『エ』と読み間違えたというのです。そんな単純な話? さらに『鬼(オニ)』も、そもそもは『隠(オン)』から転じたモノだという説。『ン』を『ニ』と読み間違えたのだという。

たしかに昔から戸籍は手書きだったから、役場の担当者が転記し間違えて、戸籍上の名前が自分の親の申し出た文字と違ってしまったとか云う話は良く聞きます。実は、わたしの名前は『ユウジ』ですが『コウジ』と間違えられたことは数多くあります(笑)

そんないい加減なことで、歴史上の名前が間違ったまま伝承されてしまって、「それでいいのか?」という気持ちになりませんか?(わたしの名前で云えば、そんなことはとんでもないことです) でも、コトバの歴史はこうやって換わっていくことが当たり前なのですね。時代とともに換わっていく中で「それは本当は違うんだよ」とか云ってみたところで何の意味もない。コトバというものはそんなものなのでしょう。でも、発音の聞き間違いや伝え間違いというのと違って、文字を勘違いしたというのは、どうも・・・なんだかなぁ。ということで、もしもカタカナよりもひらがなが先に普及されていたら、『あまびこ』と『あまびえ』、『おん』と『おに』・・・間違えようがないから、きっと今とは違ったおなまえになっていたことでしょう(もちろん、『ゆうじ』と『こうじ』も別物であることが明白ですが)。

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疑心暗鬼

COVID-19感染の広がりの波は止まるところを知らず、奇しくも「ペットのイヌにPCR検査したら陽性だった」ということから、「『PCR検査陽性=感染』というわけではない」ということが理解でき、「咽頭ぬぐい液や唾液に新型コロナウイルスが存在していても感染しているわけではない」ということが分かりました。でも、やはり人間の心理として気味は悪い。

ちなみに、大阪府知事のいうポピヨドンうがい液の効果も結局この理論だから、口腔内にいるウイルスをうがい薬で除去できたというのは当たり前と言えば当たり前。手洗い習慣のなかった連中がアライグマの様に頻繁に手洗いをするようになったのと同様、この機会に万人がうがい薬でうがいをこまめにするようになると大多数の呼吸器感染症は姿を消すことでしょう。

そんな昨今、「標準予防策を講じれば案ずることはない」とする政府と、「お盆休みを故郷で過ごそうとするのを自粛(中止)していただきたい」と誰にはばかることなく明言する地方の首長たち。わが熊本でも市長も県知事も口を揃えて「盆に他県に行くのはやめてくれ」と会見で述べました。みんなそれはよく分かっている。わたしの同級生たちも東京や大阪の大学に行っている我が子に「今年は帰ってくるな!」と涙を飲んで諭したという連中がたくさんいます。でもその一方で、妻の知人は今度の日曜に「東京から帰ってくる息子を空港に迎えに行く」と云っている。「え、こんな時に帰ってくるの?」と聞けば、「初盆と●回忌が重なっているんだから帰ってこないわけにはいかないだろ」と涼しい顔で答えた、と云って妻があきれていました。「福岡に住む息子のところに行って、車内で弁当食べながら話をした。外に出てないから大丈夫よ」というお母さん。いやいや、その息子さんがそもそも大丈夫なの?とツッコみたくなる。福岡で働く息子が帰ってきてその足で地元の友人と酒飲みに出かけたけど、「何も云えなかった」という医療従事者の女性。結局は、身内は大丈夫(のはず)と思いたくなるのが心情ですね。

わたしだって毎日ドキドキして仕事しています。グローバル企業の従業員の健診ではアメリカ帰りの人は少なくないし、感染者多数の県からの人間ドック受診者も少なくありません。入館時に体温が高くなくて症状がなければ入館を拒む理由がないわけで、検査結果でちょっと肺に陰があったり採血検査でいつもより白血球が多かったりするのを見るにつけ、「大丈夫なんかな」と心安らかではないというのが正直なわたしたちの心情。もちろん、必ずマスクをしているし診察するたびに手洗いをするわけだし、15分以上密着して話をしているわけではないのだから、基本的に”濃厚接触者”にはなり得ない仕事。そんなこと分かっているのですけれど。

”コロナ疲れ”になるの、とても分かる気がします。

 

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発熱騒動

ここ2ヶ月、キャンドルの注文が殺到していて毎日夜中まで大量の製作・発送を続けていたキャンドル作家のうちの妻。8月から発送方法を変えたのをきっかけに注文がピタッと止まりました。まあ、忙しすぎたんだから、ゆっくりしたら?と言っていた矢先の昨夜、急に顔が曇りました。「このまま注文がなくなったらどうしよう?」という悩みの顔なのかと思ったら、「さっきちょっと気分が悪かったから体温測ってみたら37.3℃だった! 怖いよ~」と。「なんで上がったのか分からない。気分は治った。コロナだったらどうしよう」「怖いよ、怖いよ」を繰り返す妻。風呂に入る前にもう一度測ったら36.6℃。「ほら、大丈夫だよ」と慰めてはみたものの、お互いに半信半疑。実はその直前に測った私の体温は36.8℃。いつもよりやや高め。

妻は、甲状腺の手術を受けて以降、交感神経系の調整がおかしく、特に体温が乱高下するのが特徴。急に暑がったと思ったら急に寒気がする・・・「だから、怖いから体温を測りたくない」と言う。それでなくても自律神経系が弱い彼女。そんな状態になると必ず下痢をする。心配で眠れなくなる。今朝、「眠れた?」と聞いたら「眠れない」と。私が出勤してもいいかどうかがあるので渋々体温を測る。37.1℃。もう一つの体温計で再検。37.0℃。「やっぱり37℃台ある!」。もうプチパニック。「その程度なら大丈夫だよ。眠れなかった上に暑かったんだから、夏はみんな高めなんだよ」と慰めているのを尻目にまた検温。36.7℃。「よかった。36℃台にならないと気持ちが落ち着かないんだよ」と言いながら、少しだけ笑った。

夏だからね。連日体温並みの気温。部屋の中でクーラーをガンガンにかけているとはいえ、体内に籠もる体温は当然高めになります。基本的に、冬の頃と同じ感覚で体温を考えていると、不要な心配で心を壊してしまいそうになります。くわばら、くわばらです。

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ソーシャルディスタンス

職場のスタッフルームは昼食会場でもあります。

そもそも4人掛け用の机が並んでいましたが、COVID-19対策として第一波の時に椅子を半分に減らして斜向かいになるように配置されました。この至近距離で斜向かいにしたところでお互いは近いから向かい合わせと大差ないんじゃないの?とか内心思っていました。

それが、今回の再流行を受けて机の配置が変わり、1机に1椅子になりました。皆が奥の壁に向かって独り黙々と食事をしている光景は異常ではありましたが、おそらく社会が求めているソーシャルディスタンスとはこのレベルなんだろうなと思いました。食事中はマスクができなくて無防備なのですから。ところがこれでは席数が足りなくてランチ場所難民ができてしまうのです。そのため、翌日には苦渋の策として1机に2椅子、ただし向かい合わせにせず隣り合わせで皆が同じ方向になるように配置されました。まあ、これが実現可能な現実的な配置かなとは思いましたが、この配置になった途端に談笑があちこちから聞こえるようになりました。小さな机に隣同士で座れば、見知らぬ人との相席ではないのだから自ずと会話が生まれてしまう。これは自然の流れではあります。これで皆が壁に向かって無言で黙々とお弁当を食っていたら、まるで軍隊か囚人の集団みたいな異様な風景になってしまうことでしょう。

一応、職場のトップから「昼食時のマスクなしでの会話は禁止します」という強いメッセージメールが届きましたが、実際には数十センチの距離でご飯食べながら談笑している人たちだらけ・・・よほど向かい合わせの斜向かいの方がソーシャルディスタンスが保てるのじゃないかと感じたくらいです。「こりゃ、だれかが感染したらみんな濃厚接触者だわ」なんて懸念しながらも、そこで注意とかして煙たがられるのはイヤだから、何も云わずにさっさとその場から立ち去るのがわたしのスタンスであります。もともと「メシ食っている時間が一番もったいない」と思っているわたしは、昼食の時に人とゆっくり語り合いながら食べる習慣がなく、黙々と食べて食べ終わったらさっさとその場から退散するのが常ですので、あまり影響はないのです。

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大腸ファイバーは何歳までしていい?

大腸内視鏡検査、高齢者で合併症リスク高い

 Medical Tribune2020.7.14配信号の記事です。人間ドックに従事するわたしたちにとっては10年以上前から論議されている内容です。今回のカナダからの報告:「カナダ・University of TorontoのNatalia Causada-Calo氏らは、大腸内視鏡検査後30日以内の合併症リスクは50~74歳の人に比べて75歳以上では2.3倍であったとする後ろ向きコホート研究の結果をJAMA Netw Open(2020; 3: e208958)に発表した」というのは、一つの提言ではあります。

わたしたちも、「高齢になればなるほど、検査で病気を見つけ出すメリットよりも、内視鏡で粘膜を傷つけたり洗浄剤が身体の負荷になるなど危険性が高くなる一方なのだから、一定年齢に達したら便潜血検査でいいのではないか。それで陽性になった人だけ外来で精査を受ければ十分ではないか」と主張し、「満75歳以降は全大腸内視鏡検査を受けさせない」と決めるべきではないかと要望を出したことがあります。でも、答は、ノーでした。「明確な理由が無い限り、希望する医療を受ける権利を拒否することはできない」という法律があるからなのだそうです。つまり、本人が「受けたくない」と云わない限り、どんな年齢になっても希望するならそれを実行する義務が医療者にはある、とか。

高齢者になればなるほど健康に関心が高くなり、高齢になればなるほど癌などが発症する確率が上がるわけで、「『75歳以上は検査しない』というのは、自分たちを切り捨てる(どうなってもいいという)つもりなのか?」と抗議されることもあります。社会生活のレベルは高齢者になればなるほど個人差が大きくなるモノではありますが、粘膜年齢は暦年齢にほぼ一致します。やはり高齢ほど事故は起こりやすいのです。検査することによって腎機能や心機能を低下させることも少なくないわけです。「危険性が高くなるのでもう今年で最後にしましょ」と提言すると「そんなことこっちの勝手だろ」と引かないのです。「それで、もし手遅れのがんができていたら責任取るのか?」とも。

どうか、「大腸がん検診の大腸内視鏡検査は、特別な理由が無い限り原則として75歳までとすべきである」とか、偉い方が規則として明文化していただけないものでしょうか。

 

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味覚鈍麻

味覚感度を改善する心リハが効果的

Medical Tribune2020.7.31配信号でこの見出しをみつけて、「なに? 運動をすると味覚障害が改善するってこと?」「COVID-19感染者の味覚障害がなかなか治らないのを運動で改善させる?」とか思ったのですが、読んでみるとそういうことではありませんでした。『心リハ(心臓リハビリテーション)』は”包括的リハビリ”と呼ばれ、運動機能・心肺機能の改善に加えて、生活のしかた、食事の取り方、メンタル面の立て直しなども総合的にすべてひっくるめてリハビリテーションを行うという考え方なのです。つまり、味覚感度を上げる(心臓病患者は味覚感度が低い)ための食事指導が心機能・腎機能の改善を促すだけでなく、栄養状態がよくなって身体機能も改善する、ということのようです。

これは、先日Web開催された日本心臓リハビリテーション学会で、山陰労災病院の水田栄之助先生が発表した検討結果です。心リハを要する心筋梗塞患者に味覚感度テストを行ったところ、甘味感度が約36%、塩味感度が約57%で低下していたそうです。舌にある味蕾細胞の細胞分裂には亜鉛が必要でありこれが不足すると味覚障害が起きると云われています。それを改善させるための食事指導を続けていくと薄味の中に味の深みを感じられるようになり、その結果として食欲が増し、筋肉量が増えたという結果を提示してありました。

水田先生は以前にも「野菜摂取量が少ないと甘味感度が、肥満傾向にあるとうま味感度が低下しやすい」という学会報告があります。今回は心臓病患者の味蕾を修繕することが書かれていますが、実は高齢者よりも若い人に味覚障害の人が多い印象があります。香辛料の辛さは苦手だしうま味なんてよく分からないけど、塩分や甘味は濃くしないとおいしさを感じないという人たち・・・『味覚鈍麻』な若者の舌が心臓病や腎臓病患者の味覚と同じになっているのではないかと、少し懸念しています。

 

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