タンパク質は腎機能を悪化させない?
『「蛋白質摂取=腎機能低下」は常識でも誤謬かも』(Medical Tribune "Doctor's Eye" 山田悟 2020.8.7配信号)
「タンパク質は腎機能を悪化させる」という概念はこれまでの常識でしたが、明確な科学的根拠に乏しいために、最近の諸学会(特に糖尿病学会)ではガイドラインからタンパク質制限の推奨を除外する動きになっているというのです。一方で日本腎臓学会はいまだに「腎臓病進行を抑制するためにタンパク質摂取量制限を推奨すべき」としています。
とにかくわたしたち予防医療に携わる医療者の立場としては、CKD(慢性腎臓病)の診断をつけられた受診者にどのような食事指導をするのかが一番悩ましい点です。腎機能は年齢とともに低下するものであり、高齢者ほどタンパク質摂取が重要になるためのジレンマは以前にもここで紹介しました。コレステロール治療の要否論争以上にこのタンパク制限要否はわたしたちを悩ませる項目であり、早く明確な方向付けがほしいところです。
そんな中で山田先生が紹介したオーストラリアの研究報告はカルシウム摂取骨折予後研究のサブグループ解析なのですが、これによると、「植物性タンパク質摂取が多いほどeGFRの低下速度が緩徐になり、動物性タンパク質摂取では有意な関連が見られなかった」、つまり、「植物性タンパク質は腎機能低下に保護的に作用し,動物性タンパク質は保護にも悪化にも作用しない」ということになり、「蛋白質制限食よりも摂取蛋白質を植物性にするという治療選択肢を患者に提示する患者中心アプローチを考慮すべきだと結論している」というわけです。
ま、これはこれで説得力はあるので、説明の時に活かしてみたいと思います。要するに、「年取ったら肉食え」は必ずしも正しくはないぞ、ということですよね。
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