味覚鈍麻
Medical Tribuneの2020.7.31配信号でこの見出しをみつけて、「なに? 運動をすると味覚障害が改善するってこと?」「COVID-19感染者の味覚障害がなかなか治らないのを運動で改善させる?」とか思ったのですが、読んでみるとそういうことではありませんでした。『心リハ(心臓リハビリテーション)』は”包括的リハビリ”と呼ばれ、運動機能・心肺機能の改善に加えて、生活のしかた、食事の取り方、メンタル面の立て直しなども総合的にすべてひっくるめてリハビリテーションを行うという考え方なのです。つまり、味覚感度を上げる(心臓病患者は味覚感度が低い)ための食事指導が心機能・腎機能の改善を促すだけでなく、栄養状態がよくなって身体機能も改善する、ということのようです。
これは、先日Web開催された日本心臓リハビリテーション学会で、山陰労災病院の水田栄之助先生が発表した検討結果です。心リハを要する心筋梗塞患者に味覚感度テストを行ったところ、甘味感度が約36%、塩味感度が約57%で低下していたそうです。舌にある味蕾細胞の細胞分裂には亜鉛が必要でありこれが不足すると味覚障害が起きると云われています。それを改善させるための食事指導を続けていくと薄味の中に味の深みを感じられるようになり、その結果として食欲が増し、筋肉量が増えたという結果を提示してありました。
水田先生は以前にも「野菜摂取量が少ないと甘味感度が、肥満傾向にあるとうま味感度が低下しやすい」という学会報告があります。今回は心臓病患者の味蕾を修繕することが書かれていますが、実は高齢者よりも若い人に味覚障害の人が多い印象があります。香辛料の辛さは苦手だしうま味なんてよく分からないけど、塩分や甘味は濃くしないとおいしさを感じないという人たち・・・『味覚鈍麻』な若者の舌が心臓病や腎臓病患者の味覚と同じになっているのではないかと、少し懸念しています。
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