大腸ファイバーは何歳までしていい?
Medical Tribune2020.7.14配信号の記事です。人間ドックに従事するわたしたちにとっては10年以上前から論議されている内容です。今回のカナダからの報告:「カナダ・University of TorontoのNatalia Causada-Calo氏らは、大腸内視鏡検査後30日以内の合併症リスクは50~74歳の人に比べて75歳以上では2.3倍であったとする後ろ向きコホート研究の結果をJAMA Netw Open(2020; 3: e208958)に発表した」というのは、一つの提言ではあります。
わたしたちも、「高齢になればなるほど、検査で病気を見つけ出すメリットよりも、内視鏡で粘膜を傷つけたり洗浄剤が身体の負荷になるなど危険性が高くなる一方なのだから、一定年齢に達したら便潜血検査でいいのではないか。それで陽性になった人だけ外来で精査を受ければ十分ではないか」と主張し、「満75歳以降は全大腸内視鏡検査を受けさせない」と決めるべきではないかと要望を出したことがあります。でも、答は、ノーでした。「明確な理由が無い限り、希望する医療を受ける権利を拒否することはできない」という法律があるからなのだそうです。つまり、本人が「受けたくない」と云わない限り、どんな年齢になっても希望するならそれを実行する義務が医療者にはある、とか。
高齢者になればなるほど健康に関心が高くなり、高齢になればなるほど癌などが発症する確率が上がるわけで、「『75歳以上は検査しない』というのは、自分たちを切り捨てる(どうなってもいいという)つもりなのか?」と抗議されることもあります。社会生活のレベルは高齢者になればなるほど個人差が大きくなるモノではありますが、粘膜年齢は暦年齢にほぼ一致します。やはり高齢ほど事故は起こりやすいのです。検査することによって腎機能や心機能を低下させることも少なくないわけです。「危険性が高くなるのでもう今年で最後にしましょ」と提言すると「そんなことこっちの勝手だろ」と引かないのです。「それで、もし手遅れのがんができていたら責任取るのか?」とも。
どうか、「大腸がん検診の大腸内視鏡検査は、特別な理由が無い限り原則として75歳までとすべきである」とか、偉い方が規則として明文化していただけないものでしょうか。
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