スティグマとイナーシャ(2)
Clinical inertia(臨床イナーシャ)ということばも今回の研修会で初めて知った単語です。
「Inertia」とは、”別の力を加えず状態が変化しない「慣性」であり、「治療目標に達していなくても、治療内容の再考など適切な対応をしないこと”とスライドには書かれていました。
どういうことかというと、少し検査値が正常に達していなくても「この次も正常にならなかったら何か考えましょう。とりあえず今回は今までの薬で様子をみましょう」と云ってしまって、そのまま次の受診時も、その次の受診時も同じような対処を続けてしまって、結局的確な治療変更や治療強化の機会を失ってしまうことへの懸念です。高血圧の治療とか、脂質異常の治療とか、わたしたち医者はついやりがちな過ちです。「まあまあなのだから、そこまで強い治療を強いなくてもいいのではないか」という思いがどこかにあるのだと思いますし、「薬を変える」ということに対して患者さんがイヤな顔をするのではないかと勝手に思って、ついいい顔をしてしまいがちになるのです。
「目標までもう少しだけど、治療目標を達成していないので、もう一度見直しする」という姿勢が重要で、ひいてはその努力によって患者さんの予後を良きモノに導き出せるのだという強き意志を持って治療をすべきである、という日本のクリニックの外来医師に対するメッセージであると受け止めました。
ちなみに、これは『高血圧治療ガイドライン2019 第14章 高血圧管理の向上に向けた取り組みと今後の展望 203ページ』に掲載されているそうです。お手元にお持ちの方は、一度ご確認ください。
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