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スティグマとイナーシャ(1)

今年は人間ドック健診情報管理指導士(人間ドック健診アドバイザー) 2020年度ブラッシュアップ研修会もWeb開催でした。Web視聴で単位をもらえるのはとても助かります。仕事を休まなくていいし、田舎の人間にとっては旅費や宿泊費が浮くのもとても助かります。

そのweb視聴をこの週末に行いました。講義を視聴する中で、気になった単語が、『スティグマ』と『イナーシャ』です(武田病院健診センター枡田 出先生「知っておきたい生活習慣病関連の臨床ガイドラインのポイント」から)。

『スティグマ』(stigma)は、特定の属性に対して刻まれる「負の刻印」・・・誤った知識や情報が拡散することで、対象者が精神的・物理的に困難な状況に陥ること、だそうです。

たとえば糖尿病は、完治する病気ではないけれど治療法が飛躍的に向上して血糖コントロールを十分に保つことができるようになり、現在は普通の人と何ら変わらない生活が送れるようになっています。それなのに糖尿病であるがために就職や昇級に影響を与えたり、あるいは「糖尿病の人はそもそも日常生活がだらしない」などという誤解を受けて誹謗中傷を受けたりするがために、自分が糖尿病であることを隠したりして治療勧告を無視して重症化するパターンが少なくないというのです。

あるいは、わたしたち医療者は、患者さんに対して「糖尿病患者の寿命は10年短くなる」とか「きちんと治療しないと重篤な合併症を引き起こすぞ」とかいう脅しの切り口で啓発しようとする傾向があります。わたしの大嫌いな『重症化予防』という切り口はまさしくこれだと思います。これは予防医療従事者や自治体の保健師さんとかはつい良かれと思ってやってしまいそうなことです。このネガティブな面の強調が”社会における糖尿病に対するスティグマを助長する”のだ、と講義では指摘されていました。

糖尿病は決して『治る病気』ではない。でも、『きちんと管理すれば普通の社会生活が送れる病気』であることをもっと強調すべきです。もっとも、わたしは「糖尿病はサバイバル系の最高峰の病気だから、何も食えなくてもたくましく生きていける」「他人が毒を食ってゴロゴロして平気な中で、"紳士淑女たれという人生を送らざるを得ない、選び抜かれた由緒正しい家系"なのだから一番健康的な人生を送れることになるでしょう」などと云って、発病前からもっと楽しく頑張る方法を提案している”変な医者”ではあります。

 

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